ムスリム、関空で快適に ハラール対応、国内初の男女別祈とう室も


 関西国際空港の外国人出入国者数は昨年、過去最多を記録し、イスラム教徒(ムスリム)の利用も年々増えている。運営会社「関西エアポート」によると、2017年の年間利用者は約27万人。災害や食事など同空港のムスリム対応を取材した。【鶴見泰寿】

 昨年9月の台風21号で一時閉鎖した教訓から同社は今年、災害に備え、日英中韓4カ国語の「滞留者カード」を作製。ムスリムが安心して食べられる「ハラール」非常食の項目も設けた。担当者は「台風の時は、食事などで細やかな対応ができず、配布に列ができた。滞留者カードで事前に把握すれば、課題は解消できる」と語る。

 台風後新たに、ハラール認証マークの入ったアルファ化米やクッキーを豊富に加えて旅客用に計3万食を用意、3日間の滞留に備える。ガルーダ・インドネシア航空のインドネシア人職員(49)は「日本語や英語が話せないムスリムは多い。認証マークで判断できるのは大きい」と話す。

 ハラール対応レストランは、そば店とうどん店の計3店舗がある。これらの店を運営する2社は、ハラール機内食を作るグループ会社も運営している。

 先駆けは13年8月に全メニューをムスリム向けにした「おらが蕎麦(そば)」。系列のそば店「そじ坊」も14年4月にハラール対応にした。約20種類のそばをはじめ、イスラム教で摂取が禁じられている豚肉の代わりに、専用鶏肉を使ったチキンカツ丼などを用意した。この2店の親会社は昨年8月に「ハラール管理室」を新設。さらなる食材の適切な管理や「飲酒客とムスリム客とは隣同士にしない」といったスタッフの教育を徹底する。

 「ざ・U―don」は15年1月にオープンし、ハラール専用厨房(ちゅうぼう)で作られた食材を使用する。かけ、ざる、ぶっかけなど7種類を用意。イスラム教ではアルコールが禁じられ、みりんが使えないため、担当者は「だし作りに腐心した」と語る。おでん、カレーも好評という。


男性専用の祈とう室で、お祈りをするガルーダ・インドネシア航空の職員=関西国際空港で2019年7月24日午後4時1分、鶴見泰寿撮影
 両社の担当者は「東京五輪や大阪万博に向けて、さらに内容を充実させたい」と話す。

 祈とう室は06年に1室がオープン。14年にリニューアルされて現在はターミナル1に3室ある。国内空港では初の男女別室で、手足を清める洗い場を設けた。無料で24時間利用できる。

 リニューアルは、ムスリム旅客の増加から「国際線の出発前の待ち時間にお祈りしたい」などの声を受け、12年から検討し始めた。アラブ首長国連邦、カタール、インドネシア、シンガポールなどの空港を視察。関空の海外航空会社のムスリム職員にもヒアリングを重ねて、本場の施設に近づけた。

 トルコ人男性(38)は、日本国内の空港で完全に男女が別室の祈とう室は珍しいと語る。「男女一緒には祈ることができない。気遣いはありがたい」

 関西エアポートの担当者は「国内の他空港と情報連携して今後もムスリム旅客の環境改善を図りたい」と話す。

https://mainichi.jp/articles/20190805/k00/00m/040/032000c