「対向車にハイビームで照らされると、まぶしくて数秒間前が見えなくなる。最近は自動(オート)ハイビームの車が増えているが、自分の責任で使用するべきではないか」。大津市に住む女性(47)の意見が、京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に寄せられた。取材をすると、ヘッドライトの使用に関する違反があることや、近年導入が進むオートハイビームは万能ではないことが分かった。

 ハイビームの正式名称は「走行用前照灯」で前方100メートルを、ロービームは「すれ違い前照灯」で前方40メートルを照らすことができるヘッドライトを指す。名前の通り、夜間走行時はハイビームの使用が想定されている。2016年には警察庁が「交通に関する教則」を改訂して、積極的な使用を明確化した。

 同庁によると、同年に夜間にハイビーム以外で走行し、発見の遅れが原因で起きた歩行者の死亡事故は全国で225件あった。同庁は、うち半数以上の126件がハイビームで衝突を回避できた可能性が高いと分析している。

 一方、道交法では、夜間に対向車とすれ違うときや前走車がある場合は、ロービームへの切り替えなどを義務付けている。このため、ハイビームのまま走行すると、道交法の「減光等義務違反」(1点、反則金6千円)に問われることがある。同庁交通局によると、同違反は18年に全国で22件(滋賀県1件、京都府0件)あった。

 同法では「夜間は前照灯などを付けなければならない」とあるが、種類の記述はなく、「ロービームのままでも違反にはならない」(滋賀県警交通指導課)。ヘッドライトは周囲の状況に応じてこまめに切り替えるのが望ましく、県警交通企画課は「頻繁に操作することで、周りに意識が向く」と強調する。

 近年、ヘッドライトを自動で操作するオートハイビームが普及しつつある。先進安全技術の一つで、車両前面のセンサーやカメラで前方の状況を判断してライトを切り替える。

 日本自動車連盟(JAF)や自動車メーカーによると、統一基準はないためメーカーによって切り替えのタイミングが違い、大雨や濃霧などの視界不良時は、うまく作動しないことがあるといい、違反に問われる可能性もある。JAF滋賀県支部の生田真事業部長は「機能を過信せずに、必要に応じて自分で切り替えてほしい」と呼び掛ける。

 では、対向車のヘッドライトがまぶしいときはどうすれば良いのか。岩倉自動車教習所(京都市左京区)の木下理営業課長は「光を直視しないように、視線を中央からやや左前にそらすのが良い」とアドバイスする。後続車のライトが気になる場合は、ルームミラーを数ミリ下に向けるとまぶしさが軽減されるという。木下課長は「左に寄せて後続車を先に行かせるのも手」と語る。

 また「あおり運転」が社会問題となる中、警察は嫌がらせ目的のハイビームを代表的な危険な運転行為の一つに挙げている。

2019年08月21日 11時46分 京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20190821000049
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