【憲法何でもOK】

いわゆる日米安保の正式名称は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」。全10条から成り、タイトルどおり「相互協力」をうたった条文もあるが、肝は言うまでもなく「安全保障」に関する第5条などである。だからみな「相互協力」を略して、日米安保条約と呼ぶ。

 さて、誰が誰の安全を保障しているのか。

 答えは簡単。米国が日本(と極東)の安全を保障している。日本は米国の安全を保障していない。「同盟の内実をきちんと説明」(NHK番組)するまでもない。日米安保がアンフェアなのは小学生にも分かる。

 形式的には双務条約でも、それこそ内実をきちんとみれば、実質的な片務性を免れない。平たく言えば、日本が一方的に得している。

 NHKは「首都の中心部に、外国の軍隊の基地があることは、世界的にみても、異例」と報じたが(同前)、それを言うなら、かかる一方的(ないし片務的)な安全保障条約こそ「異例」である。

 例えば、NATO(北大西洋条約機構)条約第5条は「武力攻撃が行われたときは、国連憲章の認める個別的又は集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復し及び維持するために必要と認める行動(兵力の使用を含む)を個別的に及び共同して直ちにとることにより、攻撃を受けた締約国を援助する」と定める(外務省仮訳)。

要するに、同盟国が攻撃されたら、みんなで直ちに軍事力を行使して助けると定めている。

 だが、日米安保は違う。ドナルド・トランプ米大統領の言うとおり、「もし、米国が攻撃されても、日本は米国を助ける必要はない。テレビで見ていられる」。大半の日本人がそれを恥じることもない。日米安保は不公正極まる。

 日本とNATO諸国との違いは単純明瞭。欧米と違い、日本は集団的自衛権を行使しない。平和安全法制(いわゆる安保法制)の下でも「存立危機事態」でしか行使しない。だからアンフェアな条約となる。

 なのに、NHK以下のマスコミは「集団的自衛権の行使を可能とする安保法制」と報じ、「憲法違反、立憲主義が崩れる」ととがめ、「徴兵制になる」と不安を煽った。

 あのとき集団的自衛権に関する憲法解釈と、日米安保を全面改正していれば、後のトランプ発言もなかったに違いない。

 蛇足ながら以上の問題点は憲法に「自衛隊」と明記しても解消しない。

 ■潮匡人(うしお・まさと) 評論家・軍事ジャーナリスト。

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190825/pol1908250001-n1.html