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2019-09-06 拡散する“現代のカラシニコフ” 中東ドローン戦争
https://www3.nhk.or.jp/news/special/new-middle-east/drone-warfare/

シリアやイエメンの内戦、イスラエルによる周辺国への攻撃・・・
日本では決して大きな注目を集めているとは言えないこうした出来事を追っていると、
ここ数年で中東の紛争に大きな変化が起きていることがわかります。軍事用ドローンが中心的な役割を担うようになっているのです。
かつてアメリカやイスラエルなどが独占していた軍事用ドローンの技術は、敵対する国や勢力に急速に拡散し、紛争の潮流を変えつつあります。

§目次
・1000キロ離れた標的を攻撃
・アッラーが遣わした鳥の部隊
・イランはこうして技術を手に入れた
・中東の紛争は新時代に突入した
・イスラエルの危機感
・ドローン対策を急ぐイスラエル
・「貧者の兵器」拡散に歯止めは

・1000キロ離れた標的を攻撃
8月17日、「サウジアラビアの油田が軍事用ドローン10機によって攻撃された」というニュースが駆け巡り、原油市場に衝撃が走りました。

被害を受けたサウジアラビア東部の「シェイバ油田」は、攻撃の起点となったとみられるイエメンの反政府勢力の拠点から1000キロ以上も離れています。
距離を単純に比較すると、反政府勢力のドローンは羽田空港から鹿児島空港までの直線距離を飛行したことになります。

反政府勢力がこれまでに行ったドローン攻撃は、これまで半径150キロ範囲だったことを考えると、航行距離は飛躍的に伸びたことになります。

・アッラーが遣わした鳥の部隊
攻撃に使われたドローンは、イランが開発した軍事用ドローン「アバビール」の改良型と見られています。

「アバビール」の由来は、イスラム教の経典・コーランの「象の章」にあります。
西暦570年頃、アフリカのエチオピアがアラビア半島に勢力を伸ばし、屈強な象の部隊を率いてメッカまで進軍しました。
「象の章」には、アッラーが鳥の部隊「アバビール」を遣わし、鳥たちが石を象の部隊に投げつけて撃退したことが綴られています。
【略】

・イランはこうして技術を手に入れた
【略】

・中東の紛争は新時代に突入した
【略】
「これらのドローンはAK47のドローン版ということになるでしょう。敵に対して恐怖を植え付け、イランとその勢力はどこにでも攻撃ができると示すものなのです」(アメリカの軍事専門家ニコラス・ヘラス氏 NPR記事より)
ハンナ氏
「イラン陣営は200ドルでイスラエル上空にドローンを飛ばし、イスラエルは1発5万ドルの迎撃ミサイルで迎撃しなければならない。
全く新しいアプローチです。中東はドローン戦争という新時代に突入したと言えます」(レバノンの軍事専門家エリアス・ハンナ氏)

・イスラエルの危機感
【略】

・ドローン対策を急ぐイスラエル
【略】

・「貧者の兵器」拡散に歯止めは
アメリカやイスラエルは今でも軍事用ドローンの装備や技術では圧倒的優位に立っています。
アメリカはアフガニスタンで繰り返し、ミサイルを搭載したドローンで攻撃を行い、数々の誤爆によって市民が犠牲になってきたと指摘されています。
また、パレスチナ暫定自治区のガザ地区やレバノンでは、イスラエルのドローンが上空を飛行する不気味な音が毎日のように確認できます。

複数の軍事評論家が指摘するように、後発組のイランは圧倒的な軍事力に対抗する「非対称の戦い」を戦うなかで、新たな切り札として「貧者の兵器」のドローンを手に入れ、拡散させています。

世界各地の軍事用ドローンの拡散をどうやって防ぐのか。前述のイギリスの軍事用ドローンに関する報告書は、輸出や使用に関する国際的な規制が必要だと指摘しています。

しかし国際社会での議論は進んでいません。
むしろ逆行するかのように「アメリカ製の武器をもっと輸出してアメリカ経済を良くしよう」と公言してはばからないトランプ大統領のアメリカは、輸出に向けた規制を緩和する方向で検討を進めているとしています。

国際社会が有効な手立てを打てない現状が続けば、中東で先行する「ドローン戦争」が、世界各地の紛争地に広がる事態も時間の問題かもしれません。(エルサレム支局 澤畑剛 ドバイ支局 吉永智哉 テヘラン支局 薮英季)