ハリケーンの進路予想をめぐって、トランプ米大統領が気象当局に圧力をかけた疑惑が持ち上がっている。きっかけはトランプ氏の不正確なツイートだったが、米海洋大気局(NOAA)がこの内容を支持する異例の声明を発表し、科学がゆがめられる恐れのある事態に発展。米メディアによると、裏には複数の政権幹部の働きかけがあったといい、米議会なども調査に乗り出している。

 発端は、9月上旬に米東部に接近したハリケーン・ドリアンに関して、トランプ氏が1日に出したツイートだった。上陸が予想されたフロリダ州などに加え、西側に位置するアラバマ州も「直撃して予想以上の被害が出そうだ」と警告した。だが、当時はアラバマ州で被害が出ることは予想されていなかった。国立気象局の地元事務所は直後にツイッターで「アラバマはドリアンの影響は受けない」と否定をした。

 アラバマは実際に被害を受けず、米メディアはトランプ氏のツイートを「不正確だ」と批判したが、本人は固執した。4日には、アラバマ州が進路に含まれるよう、サインペンで加筆された進路予想図まで持ち出して、自分が正しいと主張。その後も、批判的な報道を「フェイクだ」と繰り返した。

 「トランプ氏が、自分の発言に合わせて予想図を改ざんしたのではないか」という疑念が持ち上がる中、国立気象局を所管するNOAAは6日、トランプ氏を支持する声明を発表。アラバマ州がドリアンによる暴風被害を受ける可能性があったとしたうえで、国立気象局の地元事務所のツイートを「当時利用可能だった予報による確率とは矛盾する、絶対的な言いぶりだった」と否定した。署名もない、異例の声明だった。

 ただ、今度はこの声明をめぐり、「ホワイトハウスからの圧力があった」と米メディアが次々に報じている。ニューヨーク・タイムズなどによると、トランプ氏はツイートが否定されたことに不満を持ち、部下に対してNOAAが「立場を明らかにするよう」求めた。これを受け、マルバニー大統領首席補佐官代行が、NOAAを所管するロス商務長官に「事態の収束」を指示。外遊中だったロス氏は、NOAAのニール・ジェイコブス長官代行に電話し、解任をちらつかせて対応を迫ったという。

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朝日新聞デジタル
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