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米上院議員「TikTokの調査を」 中国政府の関与理由
2019年10月10日 20:00

【ニューヨーク=方晋清】世界最大のユニコーン企業(企業価値10億ドル超の非上場企業)の成長に不安要素が出てきた。マルコ・ルビオ米上院議員は9日、人気の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を展開する中国企業の北京字節跳動科技(バイトダンス)が過去に買収した案件の見直しを求め、対米外国投資委員会(CFIUS)に調査を求めた。バイトダンスにはソフトバンクグループが出資している。


ティックトックは、若者を中心に2017年から支持を拡大し、わずか数年で全世界5億人のユーザーを獲得したSNS(交流サイト)として知られる。バイトダンスの企業価値は約8兆円の評価を受ける。今回、ルビオ氏が指摘したのは、バイトダンスが2017年に手掛けた同業の「ミュージカリー」の買収だ。

ミュージカリーは14年に上海で創業し、主に米国のユーザーを多く抱えていた。バイトダンスによる買収後、ミュージカリーはティックトックに吸収される形で名称が変更された。バイトダンスは買収により、手薄だった欧米のユーザーを一気に広げた。

そのティックトックを巡っては、中国では検閲を理由に、ティックトックが持つ情報が中国政府に随時、吸い上げられている問題が度々指摘されてきた。米国の情報も中国政府に渡っているのではないかと疑われており、ルビオ氏はティックトックについて、CFIUSに買収を巡る調査を要請した。同氏は、理由について「(中国政府が意図的な検閲を通じて)米国人が重要視する言論や表現の自由などを抑制するために(ティックトックを)利用している」とした。

今後の展開で大きな影響を受けそうなのは、IT(情報技術)企業への投資で成長を目指すソフトバンクグループだ。同社は運用額が10兆円規模にのぼるソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)を設立しバイトダンスにも出資している。

同ファンドを巡っては、出資するシェアオフィス「ウィーワーク」を展開する米ウィーカンパニーが年内の上場を断念したばかり。理由は、企業価値が想定以上に低く、今春時点から3分の1程度になったためだった。こうした中で再び、ソフトバンクのファンドが出資する有力企業とされてきたバイトダンスに問題が浮上したことで、ソフトバンクの経営にはさらなる打撃を与えかねない事態となる可能性がある。