宮城県丸森町千刈場の台風19号による浸水被害を受けた町営住宅で、1人暮らしの無職、中野悦子さん(87)の遺体が発見された。中野さんはなぜ逃げられなかったのか。現場は台風の到来時、何が起きていたのか。周囲の人々に話を聞いた。

県警や同町役場によると、17日、中野さんと連絡が取れないことから、親族が中野さんの住む平屋の町営住宅を訪ね、和室で遺体を発見し、警察に通報した。死因は溺水による窒息とみられる。自宅には避難用とみられるリュックがあり、避難の意思があったと判断された。

同町営住宅に住んでいた無職男性(69)は買い物帰りの中野さんとよくあいさつをしており、「早く避難できていたら助かったのに」と悔やんだ。中野さん宅は、普段から午後8時前には消灯していたといい、「台風の日も早く寝てしまい、気付くのが遅れたのではないか」と推測した。

同町営住宅に住んでいた大宮徳夫さん(66)は町営住宅で2度、床上浸水を経験したが、その際は大事にはならなかったため、「今回も大丈夫だろう」と考えていたという。

台風19号が到来し、泥水が膝上まで来て初めて避難しようと考えたが、既に外は泥水の流れが強く歩けない状況だった。部屋のこたつの上に立ったが、やがて首元まで水が達すると、死を覚悟。亡くなった母に向けて「母ちゃんのとこ行くから」と声に出した。間一髪のところで、ゴムボートで近くに来た自衛隊に気付いて助けを求め13日明け方に救出された。既に屋根近くまで水が来ていたという。

大宮さんによると、町営住宅では防災無線がなく、避難の判断ができなかったという。中野さんの死を知ると、大宮さんは「高齢者も確実に避難できるように避難指示の出し方を考えてほしい」と訴えた。【平家勇太】

10/22(火) 16:58
毎日新聞
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