オウム真理教の教団幹部に殺害された坂本堤弁護士=当時(33)=一家の法要が、命日の前日に当たる3日、一家3人の眠る円覚寺(鎌倉市山ノ内)で営まれた。事件は発生から4日で30年を迎える。「節目ではあるが、事件の真相はまだ語り尽くされていない」−。同僚だった弁護士や高校時代の同級生ら約30人は、それぞれの思いを胸に墓前で手を合わせた。

 「改めてとんでもない事件だなと再認識した」。坂本弁護士と同じ県立横須賀高校で3年間同じクラスだった森山武さん(62)は今年9月、新潟県上越市にある坂本弁護士の遺体発見現場を訪れた。「誰も立ち入らない山奥に何年も土中に埋められていたのかと思うと本当に許せない」と教団の凶行に憤る。

 法要では毎年一家の冥福を祈るとともに、仲間が集まり坂本弁護士に現状を報告する。「30年は一つの節目だと思うが、坂ちゃんを囲んでみんなで思い出を話す大切な場というのは変わらない」と話す。

 「どんな事件もその本質にメスを入れなければいけないと語り合ってきた」。そう振り返るのは影山秀人弁護士(61)。坂本弁護士と一緒に、少年事件や障害者問題の解決に取り組んできた。

 昨年7月に教団幹部の死刑が一斉に執行され、一家殺害の背景が語られる機会は永遠に奪われた。影山弁護士は「事件が偶然か必然かを考察し、その社会状況で同じように苦しむ人を助けようと方策を考えるのが彼だった」と人柄をしのんだ上で、「『死刑執行によって問題の解決につながるのか』と彼なら言ったのではないか」と推し量る。

 法要後に弁護士仲間らが近くの飲食店で集まった「偲(しの)ぶ会」には坂本弁護士の母・さちよさん(87)も参加。出席者によると、さちよさんは「最近、穏やかに堤のことを思い出せるようになってきた」とした一方で、死刑に対しては複雑な胸中も吐露。「死刑が執行された人たちの親や家族はどういう気持ちでいるのかと考えてしまう」と語ったという。 

11/4(月) 1:27
カナロコ by 神奈川新聞
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