https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191112/k10012173811000.html

ことし4月、東京 池袋で高齢ドライバーの車が暴走し、2人が死亡、10人がけがをした事故について警視庁は
ブレーキとアクセルの踏み間違いが原因だったとして過失運転致死傷の疑いでドライバーを書類送検しました。

ことし4月、東京 池袋で、乗用車が暴走して歩行者などを次々にはね、自転車に乗っていた松永真菜さん(31)と
長女の莉子ちゃん(3)が死亡し、ドライバーを含む10人が重軽傷を負いました。

乗用車を運転していたのは旧通産省の幹部だった飯塚幸三元職員(88)で、警視庁が事故の原因について捜査を進めてきました。

警視庁によりますと、車の状態を詳しく確認したところ暴走につながる不具合はなかったということです。

さらに、ドライブレコーダーの記録などを分析した結果、ブレーキとアクセルの踏み間違いが事故の原因だったと判断したということです。

警視庁は12日、飯塚元職員について本人を除く11人を死傷させた過失運転致死傷の疑いで書類送検しました。

捜査関係者によりますとこれまでの調べに対して「パニック状態になってブレーキとアクセルを踏み間違えた可能性もある」
と供述しているということですが、警視庁は書類送検にあたって飯塚元職員が容疑を認めているか明らかにしていません。

今後は検察庁が、起訴するかどうかを判断することになります。


スピードは時速100キロ近くに

警視庁はドライブレコーダーの記録などを通じて、事故の詳しい状況を分析してきました。

それによりますと、車は現場の60メートルほど手前で車線変更しようとした際に加速し始めました。

車は最初に道路左側の縁石に接触する事故を起こし、そのあとさらに暴走して周囲にいた人たちを次々とはねていきました。

ドライブレコーダーの記録では、この間、アクセルを踏んだとみられるエンジン音が鳴り続けていたということです。

スピードは時速100キロ近くに達していました。

当初の調べに飯塚元職員は「ブレーキを踏んだが効かなかった」と供述していましたが、警視庁が確認したところ、
車に不具合はありませんでした。

一連の暴走でブレーキがかけられた形跡はなくアクセルが踏まれ続けていた疑いが強いことがわかり、
警視庁は事故の原因を運転ミスと結論づけました。


逮捕されないことに批判相次ぐ

今回の事故をめぐっては、飯塚元職員が逮捕されないことへの批判が相次ぎました。

捜査機関は逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合に容疑者を逮捕しますが、警視庁は飯塚元職員について
事故直後にけがをして入院し退院後も逃亡のおそれがなく、車やドライブレコーダーなどがすぐに押収されたため
証拠隠滅のおそれもなかったとしています。

また、警視庁によりますと、飯塚元職員は事故を起こす前から足が悪くつえを使って歩いていて、
医師から不要な運転は控えるよう指摘されていたということです。

ただ、飲酒運転のように正常な運転ができない状態だったとまでは言えず、直接の事故原因ではなかったと判断されました。

さらに、わざと車を暴走させたわけでもないとして、より罰則の重い危険運転致死傷罪は適用されませんでした。


厳罰求める署名 39万人分を地検に提出

事故で亡くなった松永真菜さん(31)と長女の莉子ちゃん(3)の遺族は、高齢ドライバーによる同じような事故を
繰り返さないでほしいと訴えてきました。

松永さんの夫ら遺族は、飯塚元職員に厳罰を求める署名活動を行い、集まったおよそ39万人分の署名をことし9月、
東京地方検察庁に提出しています。

松永さんの夫は署名提出の際の記者会見で、「多くの方が関心を持って下さっているので、公共交通機関の
少ない地方での足の問題など議論のきっかけにもなってほしい」と述べていました。

今回の書類送検を受けて、遺族は改めて12日の夕方、記者会見を開くことにしています。