北海道稚内市の市立ノシャップ寒流水族館でこの春、ゴマフアザラシのメスが実子以外の赤ちゃんを育てた。死産の直後で、強い母性愛が赤ちゃんを奪うといった行動に出たようだ。専門家も「1産1子のアザラシでは異例」と関心を示している。

 赤ちゃんはオスの「正吉(しょうきち)」で、3月11日に出産が確認された。母親は「ポン」(16歳)。出産7頭目となるベテランのお母さんだ。生後は順調に授乳していたが、1週間後、「アコ」(9歳)が正吉に近づいてきた。アコは死産したばかりで、正吉を「我が子」と思い込んだようだ。

 ポンは当初、正吉に近づくアコを威嚇していたが、次第に正吉から距離を置くようになり、23日からはアコが正吉に授乳するようになった。飼育員がポンに正吉を近づけても拒んだという。ポンが育児を放棄したのは初めてだ。

 同館に母子専用のプールはなく、出産後は他のゴマフアザラシと一緒に展示プールで育てている。それでも、ほかのメスの赤ちゃんを奪って育てたケースはなかった。アコは以前にも死産したことがあるが、この時は周りに赤ちゃんはいなかった。昨春が初めての出産だったが、きちんと子どもを育てた。

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朝日新聞デジタル
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