24日投票が行われた香港の区議会議員選挙は、一連の抗議活動を受けて投票率が過去最高となるなど高い関心を集め、香港メディアは、政府に批判的な立場の民主派が、すべての議席の4分の3を超える350議席に達し、圧勝したと伝えました。

4年に1度行われる香港の区議会議員選挙は、18の区議会の合わせて452の議席を選ぶもので、市民による直接投票のため、香港では最も民意を反映しやすい選挙とされています。

24日は、すべての投票所に重装備の警察官が配置されるなど厳重な警備態勢がとられる中、投票が行われ、このうち九龍半島の住宅街に設けられた投票所では、民主派、親中派の双方の支持者が締め切り直前まで投票に来た人たちに支持を呼びかけ、熱を帯びた選挙戦を繰り広げました。

選挙管理委員会によりますと、投票率は71.2%と、過去最高だった前回、4年前を24ポイント余り上回り、関心の高さをうかがわせました。開票作業が進む中、一連の抗議活動を通じて広がった政府への反発を背景に、およそ3割の勢力にとどまっていた民主派が次々と当選を決めて大きく議席を伸ばしています。

香港メディアは、政府に批判的な立場の民主派が、すべての議席の4分の3を超える350議席に達し、圧勝したと伝えました。民主派と親中派の議席の割合が選挙前と逆転したことになり、民主派は今回、大幅に勢力を伸ばしたことで、今後、政府に対する要求を強めることが予想されます。

■当選した民主派団体代表「香港人の勝利」

ことし6月以降、100万人以上が参加したとされる大規模な抗議活動を主催してきた民主派団体の代表も初当選を果たしました。

民主派団体の代表、岑子杰さんは一連の抗議活動の最初に行われた、ことし6月9日以降、合法的で平和的なデモ行進にこだわり、何度も先頭に立ってきました。

先月、立候補を届け出た際には支援者を前に、「選挙という名前の戦争が始まっただけで、抗議の運動は終わらない」と話していました。

選挙活動中には暴漢たちに襲われる被害も受けました。選挙運動が本格化した先月中旬、岑さんは繁華街でマスクをした4、5人の男たちにナイフとハンマーで襲われて頭や顔などに大けがをして入院する事態になりました。

その後、回復しましたが、投票日の24日はつえを突いて投票所に姿を見せ、支持者らから激励を受ける場面もありました。

そして、当選が決まると、支持者から花束を受け取って笑顔を見せていました。

岑さんは「一連の抗議活動が、今回の選挙を香港市民による住民投票に変えたのであり、今回の選挙結果は香港人の勝利だ。これまで強硬な姿勢を貫いてきた林鄭月娥行政長官は民意を受け止め、市民が掲げてきた5つの要求を確実に実行すべきだ」と述べました。

■当選した民主派新人「今回の選挙は政府に対する住民投票」

今回の選挙では、抗議活動をきっかけに政治の道を志した若者たちが数多く立候補し、当選を果たしました。

その1人、馮家龍さん(25)はこの夏、大学を卒業したばかりで、香港の民主主義を守りたいという思いから抗議活動に参加してきました。

しかし、どんなに多くの市民が抗議活動に集まっても、その声を聞こうとしない政府を変えたいと立候補を決意しました。

馮さんは、同じように抗議活動に参加してきた若者たちとともに戸別訪問を繰り返すなどして選挙運動を繰り広げ、投票日の24日は投票が締め切られる直前まで支持を訴えました。

馮さんの選挙区の開票所には、真夜中にもかかわらず100人以上の支持者が集まったほか、会場の外にも人があふれかえり、結果の発表を待ちました。

そして、25日未明、400票差で、現職の親中派候補を破り、当選が決まると、集まった人たちからは大きな歓声があがりました。

馮さんは「6月から今まで政府は私たちの声を聞いてくれず、警察の暴力などの問題を無視してきた。市民はこんな政府を信用できないと思っており、今回の選挙は、政府に対する住民投票だと思っている。大多数の市民が求めているのは『5大要求』だということをわかってもらいたい」と話していました。

2019年11月25日 10時13分
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