平均給与は上がったというけれど

なぜ自分の給与はこんなに低いのだろうか。そう感じたことがない人はいないだろう。国税庁が発表した最新の民間給与実態統計調査によると、2018年は上昇基調にある。年間440万円ほどだ。

しかし、上がったといっても440万円。それはリーマンショック前の2007年当時の水準に近づいたにすぎない。さらに、1997年当時の467万円よりもまだ低い。周辺国が経済成長し給与も上昇している状況において、日本人の給与は相対的にも低い状態に陥りつつある。

しかも、働き盛りの30代中盤から40代後半の読者には、さらにショックなことをお伝えしなければならない。

それは、10年前と比べて、自分たちの給料は先輩たちが同年代のときにもらっていた額よりもはるかに少ないのだ。

■40代の読者を襲う悲惨な状況

10年前(2008年)にそれぞれの年代がもらっていた給与と、10年後(2018年)の私たちがもらった給与の増減を見てみよう。この間に、社員たちの給与改定が行われた若い世代には給与を上げて訴求性を高める一方で、働き盛りの給料は下げられた。

「昔は職場でゆっくりと新聞を見ていた上司が多かった」という声をよく聞く。当時の課長は余裕があったということだ。さらに残念なことに、当時の課長と今の30〜40代の給料を比べると、今の30〜40代の給料が実は最も下がっている。かつて40歳だった人がもらっていた給料に比べ、今の40歳がもらっている給料は1割ほど減っている。

30〜40代はお金が必要な時期だから問題は深刻だ。私が若い頃は、上司から飲み会でおごってもらうと「お前が上司になったら部下におごってやれ」といわれた。しかし、私たちは上司になったが、そんな余裕はなくなった。

それにしても、2000年代初頭といえばITバブルの崩壊で、就職氷河期の状況だった。このとき社会に出た現在のアラフォー世代は就職氷河期で苦しんだだけでなく、その後の給料水準ダウンも強いられているというわけだ。

拙著『日本人の給料はなぜこんなに安いのか』でも詳しく解説しているが、日本の給料は海外と比較しても低い。為替を加味しても、製造業のエンジニアや管理職、サービス業のスタッフなどもおしなべて、欧米の主要国の中で劣るのだ。

もちろん新興国と比べると高いとはいえ、日本人はもはや国際的に「安い人たち」になっている。日本人の給料は先進国との比較では、決して高いとは言えないどころか、むしろ低い位置にある。

■理由はなんだろうか。

理由@:日本の社会は「製造業」がベースにある

工場のラインに天才的な組立作業員がいて、「その人がいなくなったら生産が止まってしまう」となってしまえば、その製造業者は困ってしまう。

だから製造業では「標準化」や、作業員の「代替性」が重要となってきた。全社一丸となって製品を作り、個性というより、チームの力が必要だ。

ただ、逆に言えば、誰かが天才的な能力を持っていても、あくまで全員で製品を作り上げるため、会社がその個人の給与のみを上げたい動機もなくなる。よくも悪くも、平等主義が蔓延する。日本は製造業で国を大きくしてきた。日本は雇用について、この製造業のスタイルがベースにある。

日本の土台を支えてきた製造業で、終身雇用ならびに安定した雇用が実現できていたことは決して無意味ではない。むしろプラスの面が多い。

例えば海外の顧客がいるとする。日本を含む、多くの国のうち、どこからか商品を調達することを検討しているとしよう。

このとき日本の会社が「うちの国では、いったん企業に就職したら、ずっと同じところで働いています。安心して働いてもらえるように、雇用を保証しています。その代わりに、給料は低く抑えられていますから、商品のコストも低く抑えています。だから、商品の価格も安いです。さらに社員は長期雇用による愛社精神から、不良品が出ないように、自分たちの責任として生産ラインを考えてくれています。ですから品質も優れています」

と言ったとしたらどうだろう。

以下ソース先で

2019/12/07 5:30 東洋経済
https://toyokeizai.net/articles/-/317736