これまで全国のどこにもなかった刑事罰付きのヘイトスピーチ禁止条例が12月12日、川崎市議会で可決、成立した。民族差別的な言動を繰り返した場合、刑事罰を科すことが盛り込まれている。川崎市では2015年ごろから、地域に住む在日コリアンをターゲットにしたヘイトスピーチ、ヘイトデモが繰り返されてきた。ヘイトスピーチにさらされてきた在日コリアンは、今回の条例成立をどう受け止めているのだろうか。(ライター・碓氷連太郎)

崔江以子さん、ホッとした表情
「採決を前に議場に向かう各会派の議員さんから労いや、『しっかり通すからね』と、声をかけてもらいました。全会派の賛成によって可決成立した、制定を願ったみんなの想いが結実した条例だと思います」

川崎市在住の在日コリアン、崔江以子(チェ・カンイヂャ)さんは、条例成立の翌日、ホッとした表情を見せながら、喜びの言葉を口にした。彼女は2016年から、SNS上でヘイトスピーチにさらされてきた。

ツイッター上で『極東のこだま』と名乗る50代男性が執拗に「チョーセンはしね」などと書き込んだため、崔さんは脅迫罪で刑事告訴したが、男性は2019年2月、不起訴処分となった。その当日、あらためて県迷惑行為防止条例違反で刑事告訴したが、2019年12月21日現在、起訴までに至っていない。

●涙が止まらなくなった
2015年11月には、在日コリアンが多く住む川崎区桜本をターゲットにしたヘイトデモが開催されたことがある。最終的には、地域住民や差別に反対する人たちが阻止して、桜本地区を通らないコースに変更された。

今回の条例案の採決で議会に立った川崎市の福田紀彦市長の姿を眺めながら、崔さんは当時のことを思い出していた。

「あのときは、(川崎市から)『法律がないから何もできない』と言われて、被害から守られることはなかった。それを思い出してしまって、委員会報告や賛成討議など、ほかの議案の採決をしている間にも涙が止まらなくなりました。

市は、条例の素案が提出された2019年6月、(ヘイトスピーチは)教育と啓発では止められないから、条例を作り市民の盾になると宣言しました。条例に反対する人たちから行政に対して静かな議論を妨げるような行為が続いても、市の姿勢はブレることはありませんでした。だから、私たちは、市民の代表である議会に市の提案を支え、深めてほしいという思いで議会審議を応援し続けてきたんです」(崔さん)

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