これまで、父親が育児をしない理由として、「長時間労働」がよく挙げられてきました。ところが、明治大商学部教授の藤田結子さんが進める調査で、休日も育児をしない父親たちの様子がわかってきました。彼らはいったい何をしているのか――。実は、泣いている赤ちゃんの横でスマホゲームに熱中していたのです。藤田さんは「妻たちの訴えは切実だ」とリポートしています。【毎日新聞経済プレミア】

 ◇泣き叫ぶ子どもの横で

 多くの母親に協力してもらって進めている共同研究で、夫たちが休日、育児よりもスマホゲームを優先しているケースに何度も遭遇しました(藤田結子・額賀美紗子「働く母親と階層間格差−仕事意欲と家事分担に関する質的研究−」日本社会学会大会、2019年10月)。一部の事例を紹介します。

 首都圏で看護師として働く佐藤恵美さん(仮名、30代)の家では、夫の大輔さん(仮名、30代)が、幼い子どもが隣で泣いていても熱心にスマホゲームをしています。不満を言う恵美さんに大輔さんはこう言い返しました。

 「子どもが生まれる前よりゲームの時間が短くなった。最近、全然ゲームできてない。この時間しかできないんだからやらせてよ」。恵美さんは、赤ちゃんが生まれてもゲームをやめられない大輔さんに不満を募らせます。

 首都圏在住でパート勤務の鈴木愛さん(仮名、30代)も、会社員の夫に不満を持っています。

 「すぐスマホを触ってしまうのが気になります。『パパ、今○○ちゃん(子どもの名前)が話しかけてたよ』と言っても、だめなんです。休みの日じゃないとゲームができないからなんだとは思いますけど……」

 妻たちは、ゲームに熱中して子どもの世話をしない夫の姿にため息をつきます。

 ◇育児より「趣味・娯楽・テレビ」が長い夫

 総務省が5年ごとに実施する「社会生活基本調査」の結果(16年)でも、この点が示唆されました。

 「6歳未満の子を持つ夫婦」を見ると、夫が1日のなかで「趣味・娯楽」と「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」にかける時間は1時間16分で、育児時間の49分より長いという結果でした。

 男性の育児時間が短いのは主に、長時間労働を強いる企業の働かせ方が原因とされています。しかし、一部の男性は時間があっても、子どもの相手より自分の趣味・娯楽に向かうようです。

 そして、私たちが実際に家庭を訪問して調べたところ、スマホゲームが大好きな夫の話をより多く耳にしたのです。

 ◇分断される子育て世帯

 みなさんの中には、こんなケースを「見たことがない」「私の周囲にはいない」と思った方もいるでしょう。その理由の一つは、職業や学歴などの社会階層によって、子育て世帯の意識やライフスタイルが大きく違うからです。

 社会学者の吉川(きっかわ)徹・大阪大教授は著書「日本の分断――切り離される非大卒若者たち」(光文社新書、18年)で次のように指摘しました。

 「育児に協力的な『イクメン』に最も肯定的な層は若年大卒男性。イクメンをめぐるキャンペーンは、夫婦の形態として大卒同類婚を想定し、彼らの家事育児を奨励するものとなっています。少なくとも私は、同類婚をしている大卒男性しか、イクメンを実践している人を見聞きしたことがありません」

 同類婚とは社会的な地位や属性が似ている同士で結婚することで、「大卒同類婚」は大学卒の学歴を持つ者同士の結婚を意味します。

 私たちの調査でも同様の傾向が見られました。妻と同じくらい家事育児を分担している夫はごくわずかにいましたが、そのケースは夫婦とも大卒で、バリバリ働く妻を持つ男性でした。

12/22(日) 9:30配信  毎日新聞 全文はソース元で
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191222-00000008-mai-bus_all