消費税ショック…落ち込み幅が大きい

 本コラムでは、今年10月の消費増税による景気への悪影響をたびたび指摘してきた。そしてついに、具体的な統計が明らかになってきた。

 総務省が12月6日に発表した10月の家計調査によると、2人以上世帯の消費支出は1世帯あたり27万9671円で、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比5・1%減少した。さらに、内閣府が同日発表した同月の景気動向指数は、景気の現状を示す一致指数が前月比5・6ポイント下落したという。

 おまけに、同日発表された11月上中旬分の貿易統計速報では、輸出金額は前年同月比の10・1%減、輸入金額は14・2%減となった。

 これらの数字は、消費増税の悪影響が現れてきたことを如実に示している。まず、貿易統計における輸入の減少は、国内需要の弱さを示す。GDPは国内所得と同義だが、それが下がると、国内消費および海外からの輸入が下がる。つまり、輸入の落ち込みは景気悪化の第一段階といえる。

 次に国内需要の大半を占める消費だ。家計調査でわかった消費の落ち込みは、想像以上にひどい。消費税率が8%に上がった'14年4月より落ち込み幅が大きい。前回の増税時よりも増税率が1%低かったにもかかわらずだ。そして、駆け込み需要があまり起こらなかったのも痛い。

 しかも、景気動向指数の下落幅は東日本大震災があった'11年3月(6・3ポイント)以来、8年7ヵ月ぶりの大きさだ。その中身を見ると、さらにひどい。

 景気動向指数の一致指数は、(1)生産指数、(2)鉱工業用生産財出荷指数、(3)耐久消費財出荷指数、(4)所定外労働時間指数、(5)投資財出荷指数、(6)商業販売額(小売業)、(7)商業販売額(卸売業)、(8)営業利益、(9)有効求人倍率から算出される。

 ところが10月の速報では、データのない(4)所定外労働時間指数と(8)営業利益以外の算出に用いる7指標のすべてがマイナスだった。要するに、景気を表す統計数字すべてが「悪化」を示している悲惨な状態なのだ。

 景気に関していえば、安倍政権は2回の増税により、7年前の第二次政権発足時に逆戻りしてしまったような形である。今回の消費増税で景気が悪くなるという予測は多かった。それでも安倍総理は、増税延期で二度もメンツを潰した麻生太郎財務相を立てるため、「三度目の正直」として増税を断行した。

 これに合わせて、今年7月の参院選直後に経済対策のパッケージを示唆していた安倍政権。政治的には盟友の麻生財務大臣の顔を立てつつ、経済的には景気を悪化させないように対策を打たなければいけない。

 普通に考えれば、増税してそれを還元するというのなら、そもそも増税しなければいい。一方で政治家は、増税してもまたそれを吐き出せば許されるだろうと思っている。
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景気悪化は明らか

 国・地方合わせた財政支出は13・2兆円、民間支出も加えた事業規模は26兆円。巨大な経済対策が閣議決定されたが、果たしてどこまで効果があるのか。

 景気悪化は明らかに進んでおり、確実に手を打たなければならない。

 にもかかわらず、臨時国会では、補正予算に関する議論ではなく、「桜を見る会」など国政に関係のない議論に終始していたのが残念だった。


12/22(日) 8:01配信
現代ビジネス
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191222-00069274-gendaibiz-bus_all