ブラジルの研究者が人間の血液細胞から肝臓オルガノイドを3Dプリンターで作成することに成功した。
そのミニ肝臓は、重要なタンパク質を作ったり、ビタミンを蓄えたり、胆汁を分泌したりするなど、肝臓が担う大切な働きをきちんと行ってくれるそうだ。

■ きちんと機能するミニ肝臓

ブラジル、ヒトゲノム幹細胞研究センター(HUG-CELL)の研究グループは、細胞再プログラミングや多能性幹細胞(iPS細胞)の培養といった生物工学技術と3Dバイオプリンティングを組み合わせ、肝臓オルガノイドを印刷した。
オルガノイドとは3次元構造を持つミニ臓器のことで、実際の臓器よりもずっと小さく単純だが、拡大すれば本物そのままの解剖学的構造を持っている。
3Dプリントされた肝臓オルガノイドは、本物と同じような肝機能を持ち、しかもこれまでに報告されたものよりもずっと長く機能することができる。

■ 細胞にバイオインクを混ぜグループ化

臓器をきちんと機能させるには細胞のグループ化が必要だ。
これまでの生体プリントでは、ヒロドゲルの中で細胞分散させる方法が採用されてきた。
しかし、このやり方だと徐々に細胞同士の結合が解けてしまい、やがて機能が失われてしまうという問題があった。

そこで今回行われたのが、細胞をバイオインクに混ぜる方法だ。
細胞を個別に3Dプリントするのではなく、プリント前にグループ化するのである。

新しい肝臓オルガノイドはこうした細胞の塊(スフェロイド)によって構成されている。
これにより細胞の結合が解除されるという問題を克服することができた。

■ 90日で血液細胞から肝臓オルガノイドに変身

研究グループによると、患者から採血し、そこから肝組織を作り出すまでには90日程度かかり、完成までには分化・プリント・熟成の3工程があるそうだ。
まず血液細胞を再プログラムしてiPS細胞に戻してやる。

次に分化を誘発し、肝細胞に変える。
細胞は攪拌されながら培養され、iPS細胞が肝組織細胞(肝細胞、血管細胞、間葉細胞)に分化するプロセスでは、すでにスフェロイドが形成されている。

それからスフェロイドをヒドロゲル状のバイオインクに混ぜ、3軸に沿ってプリント。
バイオインクは相互に結合されて、操作することはもちろん、縫合することすら可能なくらい強固な構造となる。
こうしてプリントされたものを18日間培養して熟成させれば完成だ。

■ 3Dプリント臓器で移植も可能になる未来が

完成した肝臓オルガノイドには、血液から毒素を取り除いたり、肝臓でしか生産されないアルブミンを分泌したり、肝臓ならではの機能が備わっている。
今回考案された手法で作られたのは、あくまでミニチュアとしての肝臓でしかないが、将来的には移植にも使える完全な臓器の作成にも応用できるそうだ。
この研究は『Biofabrication』(11月27日付)に掲載された。

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