平成から令和になった2019年、日本企業は早期退職募集、リストラの嵐が吹き荒れ、人手不足による倒産も急増した。令和2年を迎えるにあたり、日本経済はこの2つの矛盾を抱えどこに向かうのか。

 今年の上場企業の早期退職者募集は年明けの富士通の2850人に始まり、東芝、ジャパンディスプレイなど1000人を超える大規模な早期退職者募集が続くなど、1〜11月に36社、対象人数は1万1351人に達している。昨年1年間(12社)に比べ会社数は3倍、人数も約3倍と急増しているのだ。

 一方、人手不足による関連倒産は1〜11月累計で374件と昨年1年間の387件を上回り過去最高となることは確実な状況。この調査結果から、東京商工リサーチの友田信男情報本部長は来年の日本経済をこう見ているという。

「来年以降の早期・希望退職者募集でもすでに7社以上が判明しています。業績のいい大手企業でも新しい分野への進出のため、中高年を中心にさらに人員の整理が本格化していきます。業績の悪化している会社プラス、業績のいい会社の将来を見据えた先行型のリストラは今年以上に増えていく。少子高齢化で働き手が減少している流れの中で、人手不足と人余りという矛盾した構図はさらに広がるでしょう」

■来年は身を切る構造改革の年に

 これまで稼ぎ頭だったコンビニ業界も、ファミリーマートが20年2月までに約800人(全社員の1割)の希望退職者を募集。セブン&アイ・ホールディングスは22年度末までにグループ従業員の2割に当たる3000人を削減。そして、ゴーン・ショックを引きずる日産は、22年度末までに内外の社員1万2500人規模の人員削減の大リストラを発表した。業績にかかわらず厳しい経営環境を勝ち抜くため、来年はさらに身を切る構造改革の年になると予想される。

 野村総合研究所と英オックスフォード大学のA・オズボーン准教授らの共同研究によると、10年から20年後までに日本の601種類の職業で人工知能やロボットに代替えされる確率は49%という。現在の労働人口の半分が、人工知能やロボットに替えられる可能性が高いということだ。

 これまで日本の社会構造は、中間的な能力を持つ人が幸せに生きられた社会だったといっていい。しかし早期退職者の急増、人手不足といった流れは、これまでの日本の社会構造が崩れてきたことを示している。同時に働く側の仕事の場の選択は、正規社員と非正規社員の格差をも拡大していくことが指摘される。

「高度の能力を持つ人たちがわずかの仕事を奪い合う社会になっていく」

 と言う岡山商科大学・長田貴仁教授はこう続ける。

「政府は非正規雇用者の待遇の向上を指導しても、非正規雇用者は増え、逆に正社員の非正規社員化が進む社会になる。正社員はこれまでのような恵まれた生活はできなくなっていくでしょう」

 来年は東京オリンピックで浮かれているどころではなさそうだ。

(ジャーナリスト・木野活明)

12/26(木) 9:26配信
日刊ゲンダイ
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