【ワシントン、カイロ=共同】米国防総省は29日、イラク北部の基地が攻撃を受けて複数の米国人が死傷したことへの報復措置として、イスラム教シーア派武装組織「神の党旅団(カタイブ・ヒズボラ)」の拠点計5カ所に対する空爆を行ったと発表した。同組織はイラン革命防衛隊の支援を受けているとされ、米政府がテロ組織に指定している。

対象はイラクの3カ所とシリアの2カ所で、米側などへの攻撃の指揮所として使われた施設や武器庫が含まれる。エスパー国防長官はポンペオ国務長官と共にトランプ大統領が滞在する南部フロリダ州の別荘を訪れ、状況を報告。その後の記者会見で空爆はF15戦闘機によって行われ「成功した」と述べた。ロイター通信によると、少なくとも18人の戦闘員が死亡、50人以上が負傷した。

国防総省のホフマン報道官は声明で「イランやその代理勢力は、米軍のさらなる防衛行動を避けるためには米国や有志連合への攻撃をやめ、イラクの主権を尊重すべきだ」と警告した。

イラクの国営通信は29日、中西部アンバル州でシーア派民兵組織「人民動員隊(PMF)」が米軍の無人機攻撃を受け、死傷者が出たと伝えた。米側発表との関連は不明。PMFはイランの影響下にあり、過激派組織「イスラム国」(IS)の拠点奪還に貢献した組織で、イラク政府は米側に抗議したという。

空爆の発端となったのは、イラク北部キルクーク近くのイラク軍基地に対する攻撃。27日に30発以上のロケット弾が撃ち込まれ、米国の請負業者の民間人1人とイラク治安部隊の2人が死亡し、米兵4人が負傷した。

2019/12/30 9:50 日本経済新聞
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