米軍がイランのイスラム革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したことにより、中東への自衛隊派遣が「調査・研究」でとどまらない可能性が出てきた。米国・イラン情勢がさらに緊迫した場合、日本船舶を護衛するための海上警備行動の発令や、米国・イランの武力衝突に発展した場合には安全保障関連法にもとづく軍事的な対米支援が浮上する。

米国・イランの衝突で、もし日本経済の生命線「石油」が断たれたら


海上自衛隊哨戒機は11日に出発予定

 政府は昨年12月27日、中東への自衛隊派遣を閣議決定した。これを受けて、P3C哨戒機は1月11日に海上自衛隊那覇基地を出発し、到着次第、情報収集の任務を開始する。また横須賀基地を出航する護衛艦「たかなみ」は、2月下旬からやはり情報収集の任務に就くことになっている。

 ところが3日、米軍がイラクでソレイマニ司令官らをミサイル攻撃で殺害したことにより、中東情勢は激変した。イランの最高指導者ハメネイ師は「激しい報復」を宣言。5日にはイランでソレイマニ司令官の葬儀があり、数万人規模の参加者が「米国に死を」と米国への報復を叫んだ。

 ソレイマニ司令官の殺害について、トランプ米大統領は3日に「われわれは昨夜、戦争を止めるための行動を取った。戦争を始めるための行動ではない」と話した。さらに、イランが米国への報復を宣言したことを受けて4日、「イランが米国人や米国の資産を攻撃すれば、イランの52カ所を標的にする」とツイッターに投稿し、イランを牽制した。

 ツイッターへの投稿の中で、トランプ氏は「イランやイランの文化にとって重要な場所」を攻撃対象としたが、歴史的な建造物や宗教施設への攻撃は国連安保理決議に明確に違反する。この投稿は自らを「戦争犯罪を引き起こしかねない無法者だ」と告白したのに等しい。

 こんな人物が世界一の軍事大国、米国の大統領なのだ。

 振り返れば、トランプ氏が大統領に就任した半年後の2017年7月、筆者が米国の首都ワシントンで会った元政府高官や安全保障の専門家らは「仮にトランプ氏が戦争に走ろうとすれば、マティス国防長官やティラーソン国務長官がはがい締めにしてでも阻止する」と異口同音に話していた。

 そのマティス氏やティラーソン氏は長官の職を去り、現在、トランプ大統領の周囲は茶坊主ばかりといわれている。国防長官当時、マティス氏はトランプ氏について「小学5、6年生程度の理解力しかない」(ボブ・ウッドワード著『Fear 恐怖の男 トランプ政権の真実』より)と、その職務遂行能力に深刻な疑念を呈していたが、対イランに関して氏の懸念は現実のものとなりつつある


「日米は一体」とみなされる

 イラン政府高官は米国への報復について、「米軍施設への限定的攻撃」を強調しているが、望む望まないにかかわらず、互いの攻撃が次第にエスカレートして本格的な戦争に突入する事態があり得ることは、歴史が証明している。

 第一次世界大戦はサラエボにおけるオーストリア皇太子夫妻の殺害事件という「事件」が引き金となり、欧州全土に戦火が拡大した。

 イランによる「報復の行方」と、これを受けての米国による「再報復」という「報復の連鎖」を、世界は固唾を飲んで見守っている。

 このように情勢が激変する中で、自衛隊は中東へ向かう。米国主導の「有志連合」に加わらないとはいえ、米軍主導の「多国籍軍」に連絡幹部を派遣し、情報提供もするのだから、反米勢力からは「日本は米国と一体」と見られても仕方ない。

 昨年12月に閣議決定した時点と現在では状況が異なり、今後、自衛隊の安全を脅かす危険が迫るのは確実だろう。本来なら派遣を見合わせるのが筋だが、安倍首相は6日の年頭記者会見で「情報収集のために自衛隊を中東へ派遣する」と断言、閣議決定に変更はないことを強調した。

 むしろ、米国とイランとの対立が先鋭化すればするほど、安倍首相が自ら旗振り役となって強行成立させた安全保障関連法が首相の背中を押すことになり、対米支援へと突き進むのではないだろうか。
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三度目の「米国の戦争」支持へ



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1/7(火) 7:01配信
現代ビジネス
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200107-00069645-gendaibiz-int