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1/9(木) 17:39配信

河野太郎防衛相は10日、海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」とP3C哨戒機に対し、防衛省設置法の「調査・研究」に基づく中東海域での情報収集任務の派遣命令を発出する。哨戒機は11日に出国し、20日以降に活動を始める。2月上旬には護衛艦「たかなみ」も出港し、情報収集を強化する。中東情勢は緊迫化しているが、海自の活動予定海域は米・イラン衝突の地となったイラクなどから離れており、政府は派遣方針を変えない考えだ。

海自は9日、幹部学校(東京都目黒区)で、たかなみが不測の事態に遭遇した際の部隊運用を確認する「図上演習」を行った。視察した河野氏は記者団に「万全の準備をして出発できるようにしっかり支えていきたい」と強調した。

 P3C哨戒機は出国後、ジブチを活動拠点とし、平成21年から実施している海賊対処行動と情報収集の2つの任務を担う。

 護衛艦は海上、哨戒機は上空から、目視やレーダーにより航行する船の種類、位置、進路などの情報を集める。不審船を発見したら速やかに国土交通省を通じて船舶会社に連絡する。イランをめぐる情勢が悪化する中、政府・与党内では派遣について「緊張感が高まっているなら日本の船舶の安全のためにより重要になる」(自民党の岸田文雄政調会長)と肯定的だ。

年明け以降、関係省庁の幹部は連日首相官邸に参集し、中東情勢の分析をしているが、活動予定海域への影響はほとんど生じていないと判断している。

 衝突はイラクの首都バグダッドを中心に発生している。哨戒機が活動を予定しているアデン湾やその東側の公海は2千キロ以上、護衛艦の活動予定海域の中で最も近いオマーン湾でも1千500キロほど離れている。

 護衛艦は出港まで1カ月近くあるため情勢を注視するが、軍事衝突が拡大すれば遅れる可能性もある。

 ただ、今回の派遣は武器使用が正当防衛や緊急避難に限られ「安全確保の面で不備がある」(自衛隊幹部)との声が強い。

 不測の事態が生じた際、自衛隊法の「海上警備行動」に切り替えれば、より幅広い武器使用が可能になるが、保護できるのは自身および日本籍船に限られる。外国籍船の場合、日本人が乗っていても武器を用いて保護することができない。(田中一世)