2020年は南米大陸北東部のカリブ海に面する小国ガイアナが大化けしそうだ。同国の面積はイギリスよりやや小さく、人口は東京都世田谷区をも下回る80万人弱。南米ではボリビアに次ぐ最貧国だ。報道されることはほとんどなく、同国を知っている日本人は少ないだろう。だが、2019年12月に原油生産を開始し、2020年は富裕国への仲間入りが期待され、突如、名前が世界に知れ渡ることとなるに違いない。

ガイアナの経済成長率は、2019年は約4%であったが、2020年は約86%の世界最高値を記録するとIMF(国際通貨基金)も予想している(2019年10月の「世界経済見通し」)。1人当たりGDP(国内総生産)は、2019年(推定値)は約5250ドルであったが、2020年には約1万0250ドルと倍増し、2024年には約1万9400ドルと南米チリをも上回る規模まで上昇すると予測されている。

■ 巨大油田発見で欧米から注目される

同国の原油は2015年にエクソンモービルが発見した。2019年12月20日に生産を開始。同社はガイアナ沖合120マイルにあるスタブローク鉱区でコンソーシアムのオペレーターとして45%の権益を保有し、残りは米石油大手・ヘスが30%、そして中国海洋石油(CNOOC)が25%保有している。

スタブローク鉱区はスーパージャイアント油田に区分される世界有数の巨大油田だ。エクソンモービルはスタブローク鉱区の可採埋蔵量を60億バレル以上と見積もり、その原油生産量は数カ月以内に日産12万バレルを超え、2025年までには少なくとも日産75万バレルを超えるとしている。世界最大の原油埋蔵量を誇るものの政情悪化で生産が低迷している隣国ベネズエラを上回る生産規模に達する見通しだ。ガイアナの人口は少ないことから、国民1人当たりの平均原油生産量は世界最高となり、国民生活が激変する可能性を秘めている。

エクソンモービルのコンソーシアムの他、スペインのレプソル、イギリスのトゥローオイルなどもガイアナで原油探査を行っている。周辺国のベネズエラやスリナムなどとガイアナが異なるのは、中国やロシアの企業ではなく欧米系が影響力を保持していることだ。したがって、日本も含め欧米企業にとってもビジネスチャンスが広がっている。

ガイアナでは原油産業への投資拡大の波及効果が見込まれる。そのため、国民の生活水準上昇とこれに伴う医療や金融、インフラ整備などさまざまなビジネス機会が広がることが期待されている。現地をひんぱんに訪れるガイアナ人の知人によると、近年、ガイアナの首都ジョージタウンはオイルブームに伴う投資や渡航者の増加で既に開発が始まっており、街並みが変わりつつあるという。2015年に首都ジョージタウンの岬には欧米系大手ホテルチェーンとして初めて、マリオットホテルがオープンした。開所式にはドナルド・ラモター大統領(当時)も出席した。

ニューヨークからジョージタウンへの直行便も近年、増設されている。米系航空会社では2018年にアメリカン航空が運航を開始、2020年4月にはジェットブルー航空も新たに就航する予定だ。ガイアナは南米で唯一公用語が英語である。しかもアマゾン地域で英語が公用語である国は他にないため、知られざる秘境の観光スポットとして、今後、観光産業の発展にも期待がかかる。

原油生産とともに急成長に期待できるガイアナだが、同国の経済発展には混迷する政治、資源の呪い、国境紛争などリスクもある。

ガイアナは17世紀以降、主にオランダの植民地であったが、19世紀初めから1966年の独立までは英国の植民地であった。そのため、英連邦に属している。植民地時代の奴隷の子孫がアフリカ系ガイアナ人。奴隷制度廃止後にサトウキビ畑の労働者としてガイアナが契約労働移民として受け入れたのがインド人であった。国民の約4割を占めるインド系と約3割を占めるアフリカ系の人種の間では独立前から対立がみられ、ガイアナの政治は今日まで混沌としてきた。

人種は職種にも影響し、インド系ガイアナ人は官僚や産業界、アフリカ系ガイアナ人は軍・警察でのプレゼンスが高い。政治では初めて自由選挙が行われた1992年以降、より人口が多いインド系の「人民進歩党(PPP)」が政権を握ってきた。しかし、2015年にアフリカ系の政党「国民統一のためのパートナーシップ(APNU)」が、多人種で構成される「変化のための同盟(AFC)」と連立を組んだことで勝利し、23年ぶりの政権交代が起きた。

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