■フルタイムで働いても年収は160万程度

 全国の自治体で増えている「非正規公務員」に注目が集まっている。公務員と言えば、まずクビになることがないうえ、民間企業以上の待遇が保障されている「人気職業」だが、同じ公務員でも「非正規」となると、待遇に雲泥の差があるというのだ。

 総務省が行った最新調査では、2016年4月1日現在で全国に64万3131人の「臨時・非常勤」の職員がいるが、報酬は驚くほど低い。例えば、「一般職非常勤職員」として事務補助に就いている職員の平均時給は919円、「臨時的任用職員」だと845円だ。その時点での最低賃金は全国加重平均で798円(東京都は907円)だから、最低賃金並みの報酬だ。

 しかも、全体の3分の1である20万2764人はフルタイム、さらに20万5118人は正規の4分の3以上の時間、勤務している。公務員の所定の労働時間は年間1850時間程度とされているから、フルタイムで働いたとして、臨時的任用職員だと平均で160万円程度の年収にしかならない計算になる。

 一方、総務省の調べでは全自治体の平均給与月額は40万円余りなので、ボーナスを含めると660万円になる。その格差たるや歴然としている。しかも、仕事の内容は正規の職員と大きく変わらないケースもある。
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■一度ボーナス支給を始めたら、やめられない

 「同一労働同一賃金」の旗を振る政府としては、この非正規公務員問題を放置できなくなっている。2020年度から、非正規公務員の待遇改善に向けて、ボーナスを支給できるように新制度を設けた。総務省の試算ではこれに伴う人件費の増加分は1700億円に達するとしており、この分は地方交付税交付金として自治体に配分するとしている。これに伴ってすべての自治体が非正規職員にもボーナスを支給する見通しだという。

 待遇改善をして、その分は国が面倒をみるというのだから、自治体は喜んでいるかと思いきや、どうもそうではない。

 理由はこうだ。国から地方に交付される地方交付税の総額自体は2010年をピークに2018年まで7年連続で減り続けてきた。2019年は8年ぶりに1620億円の増加となったが、国の財政は厳しく、再び減らされることになりかねない。そうした中で、非正規職員のボーナス相当分として交付税を増やしても、その他のところで交付額を削られる可能性もある。しかも、いったんボーナス支給を始めたら、止めることはできないから、長期にわたって人件費が増える。しかも時給が上がっていけばボーナスも増えていく。それを国が面倒みてくれるはずはない、というわけだ。

■臨時職員を雇用することで人件費を圧縮

 実は、非正規公務員が増えてきたのには理由がある。地方自治体の財政が厳しさを増す中で、自治体職員の数を大幅に減らしてきたのだ。地方自治体の統合を推し進めた、いわゆる「平成の大合併」以降、退職した職員の不補充などで正規職員を抑え、人件費を圧縮する一方、臨時職員などを雇用することで仕事を回してきたのである。非正規公務員は2006年から2016年度の10年間で40%も増えたというから、ざっと20万人の非正規が生まれたことになる。

 地方公務員の人件費総額は1999年には27兆475億円に達していたが、2000年度決算で戦後初めて減少、それ以来、団塊の世代の退職で退職金がかさんだ2007年度を除いて2013年度まで減り続けた。2013年度は22兆1779億円だった。

地方の正規職員の給与は、国家公務員の給与に準じて引き上げられる慣行になっている。政府は人事院勧告に従って2014年度から6年連続して国家公務員の給与を引き上げており、地方自治体にもこの方針に従うよう通達を出している。ちなみに、総務省が自治体に出す給与を巡る通達は微に入り細を穿(うが)っており、国家公務員以上の待遇向上をしないことや、財政悪化を理由にした賃金カットなどを行うことを事実上禁止している。

■職員が高齢化するほど人件費は膨らむ



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1/10(金) 11:15配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200110-00032130-president-pol