ゴーンの冷酷で孤独な素顔


勝者総取りの資本主義の時代、大企業連合トップにまで上りつめた人間がここまで叩き落される転落劇というのは、ほとんど前例がない。

これと比較できる地位から拘置所送りになったのは、ジョージ・W・ブッシュ政権時代に経営破綻したエネルギー大手エンロンのCEOくらいだろう。

ゴーンの転落劇は、彼のような大物にも、ポピュリズムとナショナリズムの力が押し寄せていることへの現れなのだろうか。だが、時代の趨勢だけでは、彼の凋落は説明できない。

むしろ、これは彼自身に根差したきわめて個人的な物語だ。無名から必死に這い上がってグローバルビジネス経営トップにまで上りつめ、そして転落したひとりの男の物語としてとらえるべきだろう。

ゴーンのキャリアとそれを終わらせた経緯について、本誌は20人以上の関係者から話を聞いた。多くは率直に話をしたいという理由から、匿名で取材に応じてくれた。

彼らの話から浮かび上がってきたのは、経営の才覚はあるが冷血漢なゴーンの人柄。そして、決定的に不利な状況をはねのけて3社連合という企業帝国を築き上げたにもかかわらず、真の友人がほとんどいない孤独な姿だ。

ゴーンの部下たちは毎日、「明日解雇されてもおかしくない」と感じていた。後継者と目されていた人間は、次々と昇進のはしごを外され、権力の座へと至る道が急に閉ざされた。

そしてその間、要職と肩書きと高給が否応なくゴーンに集中した。逮捕時、ルノー・日産・三菱の3企業連合の会長職を務めていたゴーンはそのときすでに、さらに強大な企業連合の頂点に立つことを画策していたのだ。

ゴーンを待ち受ける裁判は、彼が実業界で経験したあらゆる困難をしのぐ試練となるだろう。そのために彼は、自身の自由を勝ち取る以上の「準備」を進めているはずだ。

また、20年近くも企業トップを務め、これまで誰も成し遂げなかったことを何度も実現させてきたのは、的確なビジョンを持っていたおかげであり、自身の特権的地位はその当然の報酬であるということを証明したいとも考えている。

私は絶対不可欠な人間──それこそが彼の自己評価なのだ。

一部抜粋、全文はソースで
https://courrier.jp/news/archives/187187/