中国が仕掛ける「債務の罠」が国際問題になっている。巨大経済圏構想「一帯一路」の名のもと、多額の借款を発展途上国に押しつけ、借金のカタに重要インフラなどを奪うものだ。インド洋に面した港湾を99年間も貸し出したスリランカはその悪例として知られる。中国援助の高層ビルなどが中心都市コロンボに次々と建設されている。「事実上の植民地化」という批判も聞かれる現地をリポートする。(文・写真、金正太郎)

 コロンボのスリランカ国立病院の向かいに、地上8階、地下1階の新病棟の工事現場がある。現場を囲う鉄柵には、漢字で大きく「中国援助」と書かれていた。建築現場の案内やスローガンも漢字で、作業員の大半は中国人のようだ。

 中国共産党の機関紙「人民日報」(電子版)によると、新病棟は2017年8月に着工し、今年11月に完成する。現在1日2000人の外来患者を、新病棟では6000人に増やし、最先端の医療を提供するという。

 このほか、コロンボには、中国の援助で、電波塔と宿泊・商業施設が一体となったランドマーク「ロータス・タワー」が昨年11月にオープンした。中国資本の高層ビルも、あちこちに建設されている。

 高級ホテルをのぞくと、フロント近くには、中国人のビジネスマンや観光客が詰めかけていた。名物のスリランカカレーを口にしない中国人の食習慣に当て込んで、ホテルの周辺には、中華料理店が軒を連ねている。

 昨年末、コロンボにはわずかに日本人観光客が訪れていたが、どこに観光に行っても、スリランカ人から「ニーハオ」とあいさつされる、虚しさを味わうことになった。

 2005年に就任したスリランカのマヒンダ・ラージャパクサ元大統領が、中国の習近平政権の掲げる「一帯一路」に呼応し、資金の多くを中国から借款して、インド洋のシーレーンに近い南部のハンバントタ港を約14億ドル(約1520億円)かけて開発した。

 ところが、金利が高く、港の稼働率も悪かったため、返済のメドが立たなくなった。結局、中国側と港の権益8割を99年間貸与する取り決めを交わして借金の穴埋めにした。中国と対立するインドを牽制(けんせい)するように、軍事拠点化をもくろんでいるとされる。

 15年の大統領選で「全方位外交」を掲げるマイトリーパーラ・シリセーナ氏が当選し、一時は中国依存から脱却する動きを見せたが、中国資本の攻勢を受けて、元のもくあみとなった。そして、昨年11月、前々大統領の弟、ゴーターバヤ・ラージャパクサ氏が新大統領に選ばれ、親中路線は加速しているという。

 日本は今春、習国家主席を国賓として招く予定だが、隣国の狡猾な外交の手玉に取られぬよう、肝に銘じておくべきだ。

1/16(木) 16:56配信
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