【日本復喝】

 中国がソフトパワーの先兵として、世界各国に設置を進めているのが「孔子学院」である。英紙フィナンシャル・タイムズは以前、孔子学院の設立目的について、「3つのT、すなわち、『台湾』『チベット』『天安門事件』から国内外の目をそらすことである」と報じた。

 米国では、中国共産党のプロパガンダ(政治・思想宣伝)と、スパイ活動を行った疑惑を受け、連邦捜査局(FBI)捜査対象となり、安全保障上の理由などから閉鎖が相次いでいる。全米に90校近くある孔子学院のうち、米東部の名門デラウェア大学は来月、中部のカンザス大学は今月中に孔子学院を閉鎖する。

 米議会超党派の議員らも、米国内の孔子学院に対し、外国人代理人登録法に基づく外国人代理人として登録するよう求めている。

 こうした動きに逆行しているのが日本だ。「どこまでお気楽なのか」と、暗澹(あんたん)たる思いにとらわれている。

 昨年5月、山梨学院大学に日本で15番目の孔子学院が開校した。当時、開校式に保守論客として知られた自民党の宮川典子衆院議員が出席していたのを知り、驚いて議員会館に話を聞きに行った。

 宮川氏によると、懸念されている思想洗脳工作などについては、山梨学院大学側が脇を締め、中国人講師陣との距離感も心得ているから問題ないとのことだった。

 教育問題に熱心に取り組んでいた宮川氏は昨年9月、40歳という若さで亡くなった。反論できない相手に筆を進めるのはどうかと自問したが、宮川氏の持論をきちんと紹介することこそが、レクイエム(鎮魂曲)になると信じ、拙著『日本が消える日』(ハート出版)でも紹介させていただいた。

 同書では、米国やカナダの孔子学院の実態が毛沢東学院であり、習近平学院というべき代物であることを、現地の報道などをもとに指摘した。

 孔子学院を併設する早稲田大学(東京)の大隈庭園には、いつの間にか孔子像が鎮座していた。筆者は一昨年夏、立命館アジア太平洋大学(APU)孔子学院(大分県)を取材で訪れた。学院入り口の壁に掲げられた立体地図では、沖縄県・尖閣諸島が中国領になっていた。

 孔子学院を頭から否定するものではない。ただ、運営方法や資金源があいまいなのは、教育機関として問題ではないのか。

 筆者は、早稲田大学をはじめ、全国すべての孔子学院に簡易書留で質問状を郵送した。京都市の立命館大学孔子学院だけが、「取材に応じられない」という返事を返してきただけである。

 世界の潮流が、孔子学院の締め出しに傾いているときに、日本だけで増殖している。今春、習氏を「国賓」として招待するだけのことはある。

1/23(木) 16:56配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200123-00000004-ykf-int