警察庁は9日、2019年に全国で運転免許を自主返納したドライバーが60万1022人に上り、前年から17万9832人増えて過去最多だったと発表した。このうち75歳以上の高齢者は35万428人(前年比5万8339人増)で、全体の6割近くを占める。東京・池袋や福岡市などで昨年発生した、高齢ドライバーによる重大事故が影響したとみられる。

75歳以上の返納者数は年々増えており、19年は14年(9万6581人)の4倍近くに増加した。また、免許返納後に身分証として使える「運転経歴証明書」の交付者は51万9188人(前年比16万448人増)で、うち75歳以上は29万5113人だった。

19年4月には東京・池袋で、旧通産省工業技術院元院長の飯塚幸三被告(88)=自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪で起訴=が運転する車が暴走し、母子が死亡する事故が発生。6月には福岡市で男性(81)が多重事故を起こし男性と同乗の妻が死亡するなど、重大事故が相次いだ。

警察関係者によると、こうした事故の直後に返納者数が急増していた。警察庁の担当者は「相次ぐ重大事故などで免許返納制度が認知され、選ぶ人が増えたのではないか」と話している。

19年に75歳以上のドライバーが過失の最も重い「第1当事者」となった交通死亡事故は401件だった。死亡事故全体に占める割合は14.4%で、過去最高だった18年に次ぐ水準だった。警察庁は運転技能検査(実車試験)や限定免許の創設を柱とする道路交通法改正案を国会に提出し、22年にも導入を目指す。
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