インドネシアのジョコ・ウィドド大統領の母、スジアトミ・ノトミハルジョさん(享年77歳)が25日午後5時前、中部ジャワ州ソロの病院で死亡した。数年前からガンを患って療養中だった。

 26日には、イスラム教の教義に従い、現地ソロにある母の自宅と近くのイスラム教墓地で一連の葬儀などが営まれ、ジョコ・ウィドド大統領とその家族、親族をはじめ近隣の市民など大勢の人々が参列した。そして参列者の顔ぶれの中には、何人もの政府閣僚や地方自治体の知事などVIPの顔があった。

■ 「ジャカルタで職務続けて」と言ったのに

 ジョコ・ウィドド大統領は25日夜、母の訃報を聞いて専用機でソロに向かう際、首都ジャカルタで「閣僚は私の母の葬儀に参加しなくていいから、ジャカルタで職務を続けてほしい」と言い残して旅立った。

 これはインドネシアが今直面している新型コロナウイルスの感染者急増という喫緊の課題に国を挙げて取り組んでいることを強く意識した発言で、「さすが庶民派大統領らしい配慮」と国民からは好意的に受け取られていた。

 ところが26日昼間にソロの自宅や墓所で行われた一連の葬儀には、警察の白バイに先導された黒塗りの高級車で乗りつける閣僚が相次ぎ、「大統領の参列自粛要請」が見事に裏切られた様子が、葬儀の様子を伝えるテレビ各局の映像で全国に生放送された。

 地元の報道によると、参列が確認されたのはルフト・パンジャイタン調整相(海事・投資担当)、プラティクノ国家官房長官、エリック・トヒル国営企業相、プラモノ・アヌン内閣官房長官らの閣僚に加え、中部ジャワ州知事、東ジャワ州知事などという。

 閣僚の中にはプラモノ・アヌン内閣官房長官のように、大統領の母の亡骸が安置されている自宅の前で待ち構える報道陣に対して到着時にわざわざ顔のマスクを外して笑顔で手を振りながら中へ歩いて入るなど場違い感を振りまく姿もみられた。

■ 結婚式は解散、カフェでは帰宅命令

 ジャカルタは20日にアニス・バスウェダン州知事がコロナウイルスの感染拡大阻止のための「緊急対応策」を発表し、4月2日までの在宅勤務要請、公共交通機関の運行制限などを実施している。

 さらに地方自治体の首長による「外出自粛」「人込みの回避」「大規模集会やイベントの自粛」方針が打ち出され、多くの会社はシフト制にしたり自宅勤務態勢にしたりすることを余儀なくされている。また公共施設や娯楽施設の大半は閉鎖に追い込まれている。

 25日に放送されたテレビのニュースでは結婚式の会場に制服姿の地方自治体の当局者が訪れ、感染拡大の危険性があることを理由に結婚式の中止と参列者の即時帰宅を呼びかけ、新郎関係者とみられる男性らが呆然とする映像が繰り返し流された。

 また夜間営業中のカフェや食堂、道端の屋台からコーヒーなどを買って座り込んで話す若者たちが同じ様に「解散して直ちに帰宅するように」と指導を受ける様子も何度も何度も放送され、視聴者に対して「外出自粛」「人が集まる場所の回避」という「大統領や地方政府」の感染拡大防止対策の徹底を訴えていた。

 さらにジョコ・ウィドド大統領や保健省関係者、さらにジャカルタ州知事などがテレビに登場しては「手洗い徹底」「マスク着用」「外出自粛」などに加えい、「他人との約1メートルの安全間隔の確保」といった感染拡大防止策を繰り返し国民に訴える試みも行われている。

■ エレベーターも定員制限、行列も間隔

 感染拡大防止の“努力”は思わぬ場所でも発揮されている。

 ジャカルタ市内の主要なオフィスビルのエレベーターには、左右の壁際に3人ずつ計6人が壁側を向いて立ち、真ん中は前向きに3人が前後に並んで立つようにガムテープなどで「立ち位置と向きの矢印」がマーキングされている。

全文はソース元で
3/27(金) 11:00配信
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