JR四国は31日、2021年3月期に12億円の経常赤字を見込む事業計画を発表した。10年間の経営自立計画で示した経常黒字3億円の目標達成は困難とする内容で、国土交通省は同日、経営自立を求め経営改善を指導した。同社は今後、国からの支援継続に向け、20年3月期中に一層のコスト削減を含めた経営計画の策定を進める。新型コロナウイルスの感染拡大による影響が長引くようであれば赤字路線の廃止も検討対象になりそうだ。

同社は17年3月に発表した中期経営計画で、21年3月期に鉄道運輸で228億円、全体で302億円の営業収入と3億円の経常黒字の目標値を掲げていた。これに対し同日発表した事業計画では、鉄道運輸の営業収入は235億円と目標を上回るものの、全体では270億円にとどまり経常損益は12億円の赤字予想となった。

しかも、事業計画には新型コロナウイルスの感染拡大による影響を織り込んでいない。同社は20年3月期も21億円の経常赤字を見込んでいるが、インバウンド(訪日外国人)急減などにより3月の運輸収入は前年同月の半分以下にとどまり、下方修正は不可避と見られる。4月以降も利用者減が続けば、1カ月で約10億円の減収となるという。

同社は21年3月期の業績予想を2月頃にまとめ国土交通省に提示したところ、利益水準の中計との乖離を指摘され、今回の経営改善指導につながったという。国交省は18年、JR北海道に「監督命令」を発令し、経営を事実上監視下に置いた。JR四国は地元自治体などと自立経営に向けた取り組みを進めており、「内容は同じだが、指導とした」(担当者)という。JR四国の半井真司社長は「重く受け止めている」と述べた。

国交省は経営指導で目標達成が困難となった理由の分析と共に、4月以降、四半期ごとに計画の進捗状況の報告を求めた。これを受け、国交省ではJR四国と共に計画の取り組みを検証し、情報を開示するとしている。

国交省からの指導を受け、JR四国では21年3月期中に10年間の長期経営ビジョンと5年間の中期経営計画と事業計画をまとめる。地元自治体などと利用促進とともにさらなるコスト削減にも取り組むが、半井社長は新型コロナの影響が続けば「赤字路線の廃止検討も避けられない」との考えを示した。

JR四国では事業計画の策定を通じて、国からの設備投資資金の支援継続を求める考え。同社はこれまで10年間に助成や無利子融資で計400億円の支援を受けてきたが、根拠となった「日本国有鉄道清算事業団の処理に関する法律」の期限が切れるため、新たな法整備が必要になる。

JR四国はこれまで10年間、様々な経営改善に取り組んできたが、コスト対策も限界に近づいている。地域とも話し合いながら、四国の鉄道を今後どうするのかが大きなテーマになってくるとみられる。(桜木浩己)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57480060R30C20A3LA0000/
2020/3/31 21:17