森友学園への国有地値引き売却を巡る財務省の公文書改ざん事件で、自殺した財務省近畿財務局職員の上司が懲戒処分を受けた直後に同局ナンバー2の総務部長に栄転し、退職後に神戸信用金庫(神戸市)に天下りしたことが、内部からとみられる告発文書で分かった。財務省は異動も再就職も問題ないとしているが、この上司は職員の死亡直後に遺書を見たがったり、遺族にマスコミに接触しないよう働きかけたりしていたことから、遺族は不信感を募らせている。(4月16日21面に関連記事)

 森友事件を巡っては、公文書の改ざんに関与させられた近畿財務局の上席国有財産管理官、赤木俊夫さんが2018年3月に自殺した。当時、赤木さんの上司だった同局の楠敏志管財部長は、改ざんに関与して戒告の懲戒処分を受けたが、その1カ月後に同局ナンバー2の総務部長に栄転していた。

 文書によると、楠氏は19年、退職して下部組織の神戸財務事務所に再任用されたが、その際、特別に個室を与えられたという。さらに今年、財務事務所を退職後、財務局や財務事務所にとって監督先に当たる神戸信用金庫に天下りしたという。

 こうした異動や天下りについて、告発文書は「当時の上司たちは全員、異例の出世をしています。まさに赤木さんを食い物にした」などと訴えている。

 取材に対し財務省は、楠氏が指摘通りに異動と再就職をしたことを認めた。ただ管財部長から総務部長への異動は、同等の職位で昇任ではないと主張。また天下りの指摘については、再就職の規制に違反する行為があったとは承知していないと答えている。

 しかし財務局関係者によると、内部で総務部長は他の部長よりも格上のナンバー2と見なされている。楠氏は再任用された神戸財務事務所で、会議室を個室として与えられていたことを認めた。さらに、神戸信用金庫への天下りは必要な手続きを踏んだのかという問いには答えなかった。

 亡くなった赤木さんの妻によると、楠氏は赤木さんが自殺した翌日、自宅を訪れた際に2度にわたり遺書に言及し、見せてほしいと申し出たが断ったという。

 また「報道機関が押しよせたらえらいことになる」「新聞社ってこわいですよ」などと、再三にわたりマスコミに接触しないよう働きかけたという。

 赤木さんの妻は、楠氏に直接話を聞こうと天下り先の神戸信用金庫に赴いたが、何も答えてもらえなかった。これについて赤木さんの妻は「夫の死を利用して出世したのだとしたら許せません。これからも真相を話してもらいに行くつもりです」と語った。

2020年4月16日
https://www.nnn.co.jp/dainichi/news/200416/20200416034.html