オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、

このままでは「@人口減少によって年金と医療は崩壊する」
「A100万社単位の中小企業が破綻する」という危機意識から、新刊『日本企業の勝算』で、日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析している。

コロナ問題で露呈した「日本の産業構造の脆弱性」を解説した前回に続き、今回はショックに対する「抵抗力」を決める要因について解説してもらった。

■危機への強さは「産業構造」に依存する

 新型コロナウイルスの問題には、2つの側面があります。
医療と経済です。医療面のことは私の専門ではありませんので、本稿では経済の側面からのみ、この問題を解説していきます。

 日本政府の対応を見ていると、日本経済の体力に大きな懸念を覚えます。日本は経済をどこまで守れるか、大変心もとない状況なのです。

前回の記事「コロナで露呈した『日本経済の脆弱性』の根因」では、小規模事業者が多くなるほど、有事の際に負のスパイラルに陥りやすいことを説明しました。

 小規模事業者は生産性が低く余裕がないため、有事の際に持ちこたえる力にはどうしても乏しくなります。すると必然的に、小規模事業者で働く労働者の比率が高い国ほど、コロナウイルスによる影響は大きくなってしまいます。

 そもそも日本には小規模事業者が異常に多く、国全体の生産性を大きく低下させています。
その結果、国の財政が弱体化してしまっているので、コロナウイルスの影響で今以上に負担が大きくなっても、財政出動は難しくなります。

 これが日本の偽らざる実態です。日本政府はまだロックダウンには踏み切っていませんが、すでに緊急事態宣言が発せられ、多くの事業者が休業を要請されています。
しかしながら、要請に応えて休業に踏み切った事業者に対しても、国としての休業補償はしないという姿勢を維持しています。

 休業補償のほか、国民生活の保障に対し政府が後ろ向きである最大の理由は、日本の財政が世界最悪の状態にあるからにほかなりません。

■スペイン、イタリアも産業構造が脆弱
このように財政が極めて厳しい状態に追い込まれてしまっているのは、日本だけではありません。
スペインとイタリアも日本と同様に、危機的状況に直面しています。

 ご存じのように、この両国は欧州の中でも突出してコロナウイルスの感染者が多く、多数の方々が亡くなってしまいました。
その理由の1つは、スペインとイタリアは財政が弱く、コロナ蔓延以前から医療への投資を削らざるをえなかったので、医療崩壊が深刻化して救える命を救うことができなかったと言われています。

 たしかにこの両国は財政が極めて弱く、EUに支援を強く求めています。EUとしてコロナ債を発行するべきと訴えていますが、ドイツやオランダなどが反対しています。賛成している国と反対している国を見ると、賛成しているのは生産性が低く財政が弱い国で、反対しているのは生産性が高く財政が強い国という特徴が見られます。

 そして、その生産性の弱さの原因は「小規模事業者の多さにある」とされています。

スペインとイタリアの生産性は、それぞれ世界第30位と第33位です。このように低いランキングになっている状況は「スペイン病」や「イタリア病」と揶揄されています。

4/23(木) 5:55
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200423-00345571-toyo-bus_all