安倍政権が隠す新型コロナ「日本の奇跡」の原因
死亡率が欧米の100分の1なのは自粛のおかげではない

 5月6日で終わる緊急事態宣言は、7日以降も延長される方向らしいが、その根拠は何だろうか。4月7日に安倍首相が記者会見で宣言を発表したとき「東京でこのペースで新型コロナの感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1カ月後には8万人を超える」と述べた。

 しかし緊急事態宣言から2週間たった4月21日の東京の累計感染者数は累計3300人。これはニューヨーク州の約3万人の1割で、新規感染者数は減っている。当初は嘲笑していた海外メディアも、最近は「日本の奇跡」と呼ぶようになった。その原因は何だろうか。

■日本の新型コロナ死亡率は驚異的に低い
(中略)

■やはり有力なのはBCG仮説

(中略)これはそれほど荒唐無稽な説ではなく、今まで肺炎などではBCGの有効性が確認されている。BCGが人体の非特異的な自然免疫の機能を活性化させ、感染しても重症化しないという説もある。

 これについて世界中で、毎日のように論文が発表されている。そのほとんどは査読前の論文なので、今の段階で確たることはいえないが、BCG接種を義務づけている国の新型コロナ死亡率が低いという相関関係は統計的に有意だという結果が多い。

■安倍政権が「人工不況」からの回復の鍵を握っている

 今の段階で確実にいえるのは、日本の驚異的な死亡率の低さの原因は緊急事態宣言ではないということである。日本の自粛より厳格なロックダウン(都市封鎖)をやっている国はたくさんあるが、 死亡率は日本よりはるかに高い。スペインは519人、フランスは369人である。

 したがって死亡率3人の日本が「緊急事態宣言を解除すると感染爆発が起こってスペインやフランスのようになる」という説は、今から激増するメカニズムを説明しない限り、空想というしかない。

 この100倍以上の差は偶然ではありえないが、政府はこれについて今まで公式にコメントしたことがない。BCG仮説についても、菅義偉官房長官が一度「厚労省が検討している」とコメントしたきりである。

 もし日本の新型コロナ死亡率の低さの原因がBCGなどの免疫要因だとすると、クラスター追跡やPCR検査などの日本の対策は無駄だったことになる。緊急事態宣言を解除しても、それほど感染は拡大しない。それがBCGをタブーにしている理由だろう。

 だが防疫対策に莫大なコストが浪費され、緊急事態宣言で多くの企業が廃業に追い込まれて失業が増えると、数千人の自殺者が出るだろう。「金は後から取り戻せるが命は取り戻せない」というのは錯覚である。

 自粛で今回の大不況を作り出したのは安倍政権であり、これは史上初めての人工不況だが、それを回復させる力も政権にある。ここで緊急事態宣言を段階的に縮小し、死者が増えるかどうか注意しながら自粛を緩和すれば、経済は先進国で最初に回復し、日本は世界のトップランナーに復帰できるかもしれない。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60369?page=1