新型コロナウイルスの感染拡大を巡り、葬儀で影響を受ける人たちがいる。感染やその疑いを持って亡くなった人のうち、身寄りがなかったり、遺族が生活保護を受給したりしている場合は、感染防止策に必要な費用が公的扶助の対象外のため葬儀社に敬遠されかねない。土葬を絶対視する在日イスラム教徒(ムスリム)も自身の信仰に沿った埋葬が困難な状況に陥っており、亡くなった後もコロナ禍の受難に見舞われる恐れがある。

 「葬儀の多様化で葬祭業はただでさえ下火。それなのに泣き寝入りするしかないのか」。全日本葬祭業協同組合連合会の石井時明会長(63)は頭を抱える。

 生活保護法に基づく葬祭扶助制度は、亡くなった人に身寄りがなかったり、遺族が生活保護を受給するなど困窮していたりする場合、葬祭費用を自治体が賄うと規定。給付基準額は20万6千円以内で、各自治体で異なる上限を設けている。ただ、新型コロナの感染防止に伴う防護服や消毒液などの費用は対象外だ。

 一方、同連合会傘下の神奈川県葬祭業協同組合は、県内で既に執り行われた感染者の事例を基に組合員が目安とする見積額を計50万円とした。通常の費用に加え、扶助対象外の防護服、ゴーグル、マスク、全館消毒、従業員への危険手当などを含む。

 感染防止策にかかる差額の約30万円分の費用について、厚生労働省社会・援護局は「給付対象としてみなせない」とし、県福祉子どもみらい局も「厚労省のルールに基づき、給付の対象外」とする。葬儀社が負担せざるを得ない状況だ。

 同組合は4月中旬、組合員80社に緊急アンケートを実施。葬祭扶助の対象となる葬儀の請け負いに後ろ向きな意見が過半数に及んだ。亡くなった人に感染、またはその疑いがあった場合、負担を強いられることへの懸念からだ。同組合理事長も務める石井会長は「自治体の要請を拒むケースが生じてしまう」と案じる。

 反貧困ネットワーク神奈川事務局の鈴木啓示弁護士は「感染拡大が続いており、トラブルが起きるのは時間の問題。葬儀を執り行えないケースも出かねない。すぐにでもルールを改定すべきだ」と警鐘を鳴らす。

◆「火葬は故人の侮辱」

 コロナ禍は宗教文化にも影を落とす。感染症法の規定では、感染リスクを抑止するため感染症に罹患(りかん)した遺体は火葬が原則だ。

 日本イスラーム文化センター(東京都)のクレイシ・ハルーン事務局長(54)は「ムスリムにとって土葬は絶対。火葬は故人の侮辱に当たる。(感染者の)土葬が認められなければ、国際問題に発展してしまう」と危惧する。イスラム教で死は通過点とみなされ、土から生まれた命を土に返す意味合いがあるという。

 南足柄市在住で飲食店を営むイラン人の男性(54)もムスリムの一人。日本で生活して30年余り。「火葬を受け入れることはできない。ムスリムにとって絶対に守られなければならない権利」と訴える。休業補償など他国に後れを取ってきた日本の対応を顧み、「ムスリムが亡くなって火葬され、問題となってからでないと対応してもらえないのでは」と危機感を強める。

 感染症法は一方で、埋葬地の都道府県知事が許可すれば土葬を認める。

 クレイシ事務局長は厚労省や、ムスリムの遺体を専門的に扱う霊園がある自治体に対し、土葬を認めるよう求めているが、明確な回答は得られていないという。4月下旬、結核で亡くなったムスリムが茨城で土葬を認められたといい、「新型コロナの感染者も同様に扱ってほしい」と訴える。

5/8(金) 5:00配信
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★1:2020/05/12(火) 00:55:10.14
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