札幌市中央区のススキノで長らく市民に親しまれた商業施設「ススキノラフィラ」が17日、閉店した。新型コロナウイルス感染拡大の影響などでスーパーや衣料品店、飲食店など約120店舗のうち半数近くが休業し、外出自粛要請も続く中、最終日は午前10時の開店から多くの客が訪れた。老朽化した現在のビルは建て替えられ、6月中旬にも解体が始まる。代わりに2023年の開業を目指し、商業施設などが入る複合ビルが建設される予定。【岸川弘明】

 運営会社「ススキノ十字街ビル」によると、現在のビルは地上8階、地下3階。札幌松坂屋として1974年に開業し、ヨークマツザカヤ、ロビンソン百貨店と名称を変え、2009年に現在の店名となった。市営地下鉄すすきの駅とつながる地下入り口付近は「ロビ地下」の愛称で待ち合わせ場所として有名だった。

 ススキノで居酒屋を営む立崎有希さん(47)は「食材の買い足しに利用させてもらった。優しくしてくれた店員さんにありがとうと伝えたい」と惜しんだ。

 ビル開業以来46年間、テナントに入る宝飾店「ジュエリーサロントムトム」の店長、岡崎頼子さん(83)は「お客さんが会いに来てくれるから今まで元気に店に立ち続けることができた。感謝の気持ちでいっぱい」と話した。

 当初予定していた閉店セレモニーは感染防止のため中止されたが、午後8時過ぎに1階のシャッターが下りるのに合わせ、従業員らが客らを見送った。

道内最大の繁華街で「待ち合わせの目印」に
 「ススキノラフィラ」はススキノ中心部の交差点に面し、1974年に札幌松坂屋として開店して以来、待ち合わせの目印として地域に親しまれてきた。建て替えが決まっており、札幌市民からは四十数年にわたって道内最大の繁華街の移り変わりを見守ってきた存在を惜しむ声が上がった。

 「ススキノの変遷とともに名前や入居店舗も変わっていった。時代に翻弄(ほんろう)されたビルだった」。タウン情報誌編集長を経て、札幌の飲食店ガイドなどを発行する亜璃西(ありす)社(札幌市中央区)の和田由美社長(70)は振り返る。72年札幌冬季五輪から程なくして、ススキノにひしめいていた小さな飲食店などの立ち退いた跡に開店した。大理石で飾られるなど重厚で豪華なインテリアで、大規模な駐車場も備わっていた。「当時のススキノで高級感のある百貨店ができたことは画期的。当時のにぎわいは札幌地下街がオープンした時に並ぶほどだった」と懐かしむ。

 高級志向も長くは続かず、名前を変えるたびに庶民的な店舗が増えた。今ではスーパーマーケットや100円ショップが入居し、スーパーが乏しいススキノで食料品を手に入れられる、貴重な庶民の砦(とりで)に姿を変えた。付近の住民や夜の街で飲食業を営む人たちが利用し、ススキノ近くに事務所を構える和田社長は「会社の忘年会の買い出しで使ったこともある。品ぞろえも豊富だったので、私も含めてなくなると困る人は多いはず」と話す。

 「ススキノの交差点は(東京・渋谷の)スクランブル交差点のようなもの」。テレビに映るとき、必ずラフィラも映り、象徴的な存在であり続けた。和田社長は「なくなる空白は大きい。次にどんなビルが建つかはわからないけれど、風景も一変するだろう」と語った。【源馬のぞみ】

毎日新聞2020年5月17日 21時46分(最終更新 5月17日 23時24分)
https://mainichi.jp/articles/20200517/k00/00m/040/159000c