新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が全面解除され、六月には学校再開の動きが全都道府県に広がる見通しになった。夏休み短縮や土曜授業、行事の見直し−。休校の遅れを取り戻すため、学校現場は急ぎ足での授業展開を迫られるが、子どもの負担が増す懸念がある。

 「学校が始まるといっても、すぐ通常通りとはいかない。正直言って、授業時間の確保はもう難しい」。東京都内の公立小の男性校長はため息をつく。当面は一つのクラスを二分割し、午前に通学する班と午後の班に分ける方針だ。

 文部科学省は、数年をかけ、学年をまたいで学習の遅れを解消してもよいとしている。最終学年は除くとしているが、校長は「六年生もカバーできない部分があれば、中学への引き継ぎも考えなければならない」と危機感をあらわにする。

 ただ、学習内容を次の学年に繰り越すことには問題もある。ある中堅教員は「学校によって進捗(しんちょく)が異なれば、転校する家庭が困る。子どものことを考えるなら、学年内に終わらせるのが筋」とくぎを刺す。

 近畿地方の三十代の男性教員が勤務する公立小では、夏休みを短縮し、週三回程度は七時間目も実施する予定だ。「植物の観察など季節が合わない学習や、宿泊行事は中止になりそうだ。そこまでやればぎりぎり間に合う」という。

 授業のスピードを速める場面も想定されるが、休校中の学びは家庭環境などに左右され、学力の差は広がっている。この教員は「授業についていけないケースもあるだろう。子どもに合わせて授業計画を変えていくほかなく、現時点で見通しはつかない」と語る。

 何よりのネックは、夏休みや学校行事がなくなることで、子どものストレスが増すことだ。「しんどい学校生活になるのは間違いない。精神面のケアも必要で、教える側も不安がある」

 再開後も密閉、密集、密接の「三密」を避けるための配慮が欠かせず、指導方法は限定される。例えば、複数人で取り組む実験や、つばが飛ぶ合唱などは避ける学校が多いとみられる。

◆図書館で公園で 対策念入り

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が解除された東京都内は二十六日、一部の施設で営業が再開された。図書館に久しぶりに利用者が訪れ、公園では子どもが元気に遊ぶ姿も。感染防止に気を配りながら、日常を取り戻す動きが静かに始まった。

 都は外出自粛・休業要請を三段階で緩和していく行程表を発表。第一段階として博物館や美術館、図書館などの再開や、五十人までのイベントの開催、飲食店の午後十時までの営業が認められた。

 品川区立品川図書館では、休館前に本を予約した人への貸し出し業務が午前九時から始まり、待ちわびた区民らが次々と訪れた。

 図書館側は感染防止のため入り口での消毒を呼びかけ、利用者の動線を一方通行にした。カウンターにはビニールシートを取り付け、床に足形の印を付けて間隔を空けて並ぶよう求めた。出勤前に寄った男性会社員(45)は「三月に予約した本をようやく借りることができた。うれしい」と話し、足早に職場へ向かった。

 多くの都立公園では、テープを張って使用を制限していた子ども向けの遊具が使えることに。台東区の上野公園では職員が遊具のテープをはがすと、子どもたちがさっそく滑り台などを楽しみ、久しぶりの屋外の遊びに夢中となった。

 緊急事態宣言の解除で、自宅のテレワークから通常勤務に戻る会社員も多く、百貨店なども感染防止措置を取りながら営業を再開している。 (奥野斐)

(東京新聞)2020年5月26日 13時58分
https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020052690135840.html