2020.5.26 16:00
https://www.sankei.com/smp/premium/news/200526/prm2005260001-s1.html
奈良市のとんかつ店「まるかつ」がテークアウトの利用客に、コロッケの無料券や割引券などを「賄賂」と称して手渡し、SNSで話題を集めている。4月にツイッターで紹介したところ、4千件以上の「いいね」が付いたという。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、店は3月末からテークアウトのみの営業に切り替えており、金子友則店長(43)は「店には来られないが、賄賂を欲しいと言ってくれる人もいる。楽しんでもらえてうれしい」と話している。
レジで会計を済ませた来店客に、スタッフが「店長からの賄賂です」と1通の封筒を差し出す。表書きにはこんな文面が。「店長、おぬしもワルよのう…」「いえいえ、お客様ほどでは…」−。思わずクスッとしてしまう。
封筒にはコロッケなどの無料券やテークアウト専用の割引券とともに、店長からの手紙と持ち帰りメニューが入っている。「お持ち帰り専門営業に切り替えたため不安になった店長、ついにお客様を買収し始めました!」。同店がツイッターにこう投稿すると、「買収されにいきます」といった返信コメントが相次いだ。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、奈良県は4月23日から遊興施設などには休業を、飲食店には営業時間を午前5時〜午後8時とするよう要請した。
人気店のまるかつには、1日平均200〜300人以上が来店していた。しかし県内で感染が拡大しつつあった3月末、「店内ではお客さん同士の距離が近くなってしまう」と危惧し、県の休業要請を待たず、独自の判断で持ち帰りのみの営業にシフトした。金子店長は「悩みましたが、お客さまとスタッフの命と健康を守らなければと思って決断した」と振り返る。
そこで思いついたのが「賄賂」だった。サービスを始めると、「おぬしもワルよのう」と切り返してくる人もいれば、「賄賂返しです」とお菓子や手紙を持ってきてくれる常連客も。金子店長は「その反応を見るのが楽しいし、みんなが笑顔になってくれてうれしい」と顔をほころばせる。
まるかつではこれまでにも、お金に困っている人にとんかつをただで提供する「無料食堂」を企画するなど、ユニークな取り組みを次々発案し、反響を呼んできた。奈良県はすでに緊急事態宣言が解除され、休業要請も緩和されたが、まるかつではしばらく持ち帰りのみの営業を続ける予定だ。
金子店長は「お客さまの笑顔を見られないのは寂しいが、今は自分にできることを一生懸命やるしかない。店内での食事を再開できたら、お客さまに喜んでもらえるよう精いっぱいおもてなししたい」と話している。
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