新型コロナウイルス感染拡大に伴う登山自粛などで存続が危ぶまれている山小屋を救おうと、ネット上で資金を募るクラウドファンディング(CF)での支援が始まった。登山アプリ開発のヤマップ(福岡)と山岳雑誌などを出版する「山と渓谷社」(東京)がそれぞれ18日からCFを募ったところ、1週間で計約7000万円が集まった(26日現在)。営業を自粛している山小屋が今後再開しても利用者の大幅減が予想されることから、有志のサポートは存続のための貴重な原資になりそうだ。

「登山文化が危機にひんしている」「営業再開しても登山者数の減少や山小屋の利用控えが多いと予想される」――。CF「山小屋支援プロジェクト」を始めるにあたり、ヤマップには全国の山小屋運営者の厳しい現状報告が寄せられた。

 山小屋は家族経営や薄利経営が多い一方、単なる休憩・宿泊施設にとどまらず、遭難救助のボランティアや登山道の維持整備など「山のインフラ」を担っている。ヤマップの担当者は「休業しても人件費や施設費などの固定費がかかり、存続が危ぶまれている山小屋もある」と言う。

開始1週間で当初の目標額の200万円を大きく超える額が集まり、「また笑顔でみなさんに会えるのを楽しみにしています」など営業再開や山への再訪を待ち望む登山愛好家からのコメントが寄せられている。現在は北アルプス(飛驒山脈)、南アルプス、富士山、八ケ岳、関東近郊など全国約40の山小屋が支援対象だが、寄付を受けたい山小屋も追加で募集している。CFは6月末まで続け、7月中に各山小屋に送金する。山と渓谷社のCFも現在約50軒の山小屋が登録し、8月13日までに集まった額を分配する。

 登山を巡る状況は厳しく、大型連休後も多くの自治体が登山を含めた遠方からの来訪の自粛を求めている。一部では登山道や登山口の駐車場も閉鎖され、既に秋や冬まで長期間の休業を決めた山小屋もある。

 一方、一部の業界団体が、登山者や山小屋関係者、山岳ガイドらに向けた手引やガイドラインを作成するなど、“山開き”に向けた取り組みも始まっている。ただ、自治体の自粛要請が弱まり、山小屋が営業を再開しても、登山は日帰りやテント泊にとどめ、「3密」が懸念される山小屋の宿泊を控える傾向が想定される。

 ▽ヤマップ「山小屋支援プロジェクト」(25日現在の寄付額約3200万円) https://readyfor.jp/projects/yamagoya

 ▽山と渓谷社「山小屋エイド基金」(同約3700万円) https://motion-gallery.net/projects/yamagoya-aid
https://mainichi.jp/articles/20200526/k00/00m/040/156000c
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