新型コロナウイルスの感染拡大の影響で売り上げが激減した中小企業などに対する「持続化給付金」を巡り、当初は支給対象外だった今年開業の事業主らから悲鳴が上がっている。政府は二十七日に閣議決定する二〇二〇年度第二次補正予算案に今年一?三月の開業者も支給対象に加えるための関連費用を盛り込む方針だが、申請の受け付けは六月半ば以降にずれ込む見込みで、後手に回る支援に不満が漏れる。 (池井戸聡)
 「開業一カ月後の急ブレーキで出ばなをくじかれた。苦しみは長年事業を続けてきた方と同じだと思う」
 東京都内で建築業を営む男性(49)は胸の内を明かす。今年一月一日付で個人事業主となり税務署などに開業届を提出。一月は約百五十万円の売り上げがあったが、コロナ禍でリフォーム工事などが続々と中止になり、二月以降の売り上げはゼロになった。
 男性は「今年の開業者にも給付金が出るのは喜ばしく思う」。ただ、六月中旬の申請受け付けには遅さを感じる。自らは開業前に電動工具類などに約二百万円を投じたが「開業間もない人は直前の投資額が多い。この時期の申請開始では経営がもたない人が多く出る」と懸念した。
 政府は今年一?三月の開業者で、ある月の収入が一?三月の平均収入の半分以下になった場合に給付金を支給する方針だ。しかし、具体的な支給額の算定方法は未定。今年開業の事業主はまだ確定申告をしていないため、政府は「収入などの審査に時間がかかる」とみており、お金が届くのは七月以降になる可能性が高い。


 東京商工リサーチによると今年一?二月に設立された株式会社などの法人数は約二万二千。三月までに誕生した法人は約三万とみられる。特に苦しいのは手持ち資金が少ない中小企業や個人事業主だ。
 政府は先月まとめた中小企業白書で、収入がない企業が預金などの手元資産で、人件費などの固定費をどの程度の期間、支払えるかを試算。資本金一千万円未満の中小企業では宿泊業で二カ月強、飲食サービスで五カ月強しか持ちこたえられないとした。
 東京都品川区の森井会計事務所には、飲食店など今年開業した人から多くの相談があるという。公認会計士で税理士の森井じゅん代表は「政府が多様な働き方を促す中で、自分も『動いてみよう』と借り入れをし、今年やっと開業した人は多い。国は広く支援してほしい」と話す。
◆1日から125万件受理 支給46万件、6000億円
<持続化給付金> 今年1?12月のいずれかの月の売り上げが、昨年の同月より半分以上減った中小企業に上限200万円、個人事業主に上限100万円を支給する制度。昨年の開業者(年途中も可)には特例を適用し、12月開業の場合(月途中も可)、12月の1カ月間の売り上げを12倍した分と、今年の売り上げが昨年12月の半分以下になった月の分を12倍した分の差額を上限額まで支給する。5月1日から申請を受け付け、25日現在で125万件以上を受理し、支給件数は約46万件、総額は約6000億円に達した。

東京新聞 2020年5月27日 08時03分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/31400