https://news.yahoo.co.jp/articles/8e53e1de926ffccaf1c37c9d4fb0d4fcc7749795

2020年1月、JR御茶ノ水駅近くの道路から戦前期に使われていた都電の線路が露出し、ちょっとしたニュースになりました。

かつての東京都内には、40路線もの都電が走っていました。それだけ多くが走っていたわけですから、
都電は都民から親しまれる存在であり、日常生活に欠かせない移動手段でもありました。

しかし、都電の存在感は時代とともに揺らぎます。高度経済成長期、国民の所得が向上したことで東京にはマイカーがあふれ、
都電と一緒に道路の上を走る光景が当たり前になったのです。

自動車が増えるにしたがい、都内の道路は渋滞が頻繁に発生。そして、渋滞は慢性化し、社会問題になっていきます。

そして残った都電荒川線

渋滞の原因としてやり玉にあげられたのが都電です。

当時、都電は道路を占領しているように捉えられ、自動車交通を阻害する邪魔者として扱われました。
そのため、都民の間から廃止論が高まったのです。

廃止を望む都民の声を受け、東京都は次々に都電を廃止していきました。代替として、地下鉄やバスが整備されたことも
都電廃止の流れを後押しします。その結果、現在は早稲田〜三ノ輪橋間を走る都電荒川線だけが残りました。

都電は荒川線のみですが、都内にはもうひとつ路面電車が走っています。それが三軒茶屋駅と下高井戸駅間を走る東急世田谷線です。

世田谷線は自動車と一緒に道路を走る区間がないため、路面電車っぽさを感じさせません。
それでも、かわいらしい車両が走り、沿線住民から親しまれる路面電車です。

荒川線と世田谷線、両者に共通するのは沿線の街や行き交う人々、利用客がほのぼのとした雰囲気を漂わせ、
のんびりとした時間を感じさせてくれることです。

変化する路面電車

そうした雰囲気も相まって、荒川線・世田谷線のような路面電車は「昔懐かしい」「昭和っぽい」といった、
ノスタルジーで語られることが少なくありません。

廃止で不要になった路面電車の車両は自治体や市民の有志に引き取られ、それらは公園などに展示・保存されています。
そうした保存・展示された車両で子どもたちが遊ぶ一方、現役時代を知る大人たちは目を細めて往時を懐かしみます。

路面電車がノスタルジーを含んでいることは否定できませんが、現役の車両は最新鋭の技術が盛り込まれているため、
それだけで語ることはできません。最近は路面電車を取り巻く環境も変化しているのです。

路面電車が新しい四つの理由

現在、路面電車に対する見方は一周回って、「新しい」「次世代を担う」といった言葉で再評価される兆しが出てきています。

路面電車が新しい公共交通と呼ばれる理由はいくつかありますが、主に

・すぐに乗れてすぐに降りられるといった小回りがきくこと
・バリアフリーのため、誰もが簡単に利用できること
・バスに比べて定時性があり、輸送力もあること
・電気を動力にしているので環境に優しいこと

などが挙げられます。

路(6)電(10)の語呂合わせから、6月10日は路面電車の日に制定されており、東京都交通局は同日の前後の日曜日に
都電の荒川車庫で路面電車の日のイベントを開催してきました。

新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、残念ながら2020年は同イベントの中止がすでに発表されています。

イベント開催を楽しみにしていた沿線住民や利用者、鉄道ファンにとっては残念ではありますが、
イベントが開催されなくても都電や世田谷線は変わらずに運行しています。都電や世田谷線を楽しむことはできるのです。