6/2(火) 11:42
https://news.yahoo.co.jp/articles/a42bb18179935790f5e385a674d5235e7ab0d1df

 政府は今年度から、ドイツとフランスと共同で、打ち上げ後に地球に帰還する「再使用型ロケット」の研究開発に着手する。従来の「使い捨て型ロケット」に比べ、コスト削減やビジネスの活性化が期待できる。実用化で先行する米国に日欧の枠組みで対抗し、巻き返しを図る狙いもある。

 再使用型ロケットは、宇宙で人工衛星などを分離した後、地上や海上の特定地点に帰還し、着陸する。点検、整備して再び打ち上げることができるため、打ち上げ回数が増えるほどコストの削減が見込める。

 民間企業がビジネスに使う通信、観測衛星は増えており、打ち上げるロケットの需要は高まっている。複数回の打ち上げに耐える設計になれば、商取引の信頼性向上が期待できる。再使用型ロケットは、使い捨て型のように「宇宙ゴミ」になることもない。

 研究開発は、宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))とドイツ航空宇宙センター(DLR)、フランス国立宇宙研究センター(CNES)が共同で行う。

 2022年度に小型実験機を高度約40キロまで打ち上げる飛行試験を行うことをまず目指す。日本は誘導制御ソフトやエンジン、燃料タンクの開発を担当。日本分の総事業費は3か年で34億円と見込み、政府は今年度予算に設計に関連する経費1億円を計上した。

 日本には現在、基幹ロケットとして「H2A」「イプシロン」がある。次世代国産ロケット「H3」は今年度の打ち上げ開始を予定しているが、いずれも一度打ち上げると再使用できない使い捨て型だ。再使用型の開発にあたっては、機体を安全に帰還させる誘導制御や燃料の安定供給など高度な技術が求められる。

 世界のロケットの商業打ち上げは年間20機前後で推移し、米国が先頭を走る。特に米スペースX社の再使用型ロケット「ファルコン9」は打ち上げ費用の安さなどを武器に受注を獲得しており、18年の市場占有率は約6割に上った。

 同社と米航空宇宙局(NASA)が成功した民間有人宇宙船も再使用型ロケットの技術を活用する。政府は再使用型が宇宙開発の主流になる可能性もあるとみている。米国の動向に危機感を持つ欧州と連携することで、効率的な技術の獲得を目指したい考えだ。