新型コロナウイルス禍で苦境にある農家を助けようと、岡山県内でスーパーマーケットなどを展開する両備グループ(岡山市)は6日、県内の店舗14店で、農家が廃棄予定だったタマネギの販売を行った。
 生産者は県内最大規模の農業法人エーアンドエス(同県笠岡市)。農業干拓地の約30ヘクタールで年間1500トンのタマネギを生産しているが、出荷先の9割は外食産業だ。飲食店の休業に伴い需要が激減し、5月下旬から180トン(約900万円相当)の廃棄作業に入っている。
 こうして廃棄予定だったタマネギを、両備グループが卸売業者を通じて1200キロを買い取った。この日は各店で「通常の小売価格の半額」(同社)の1玉28円で特価販売。店頭を訪れた人たちは、興味深げにタマネギを手に取り買っていった。
 同様の支援の動きは広がっている。窮状を知った笠岡市は「ふるさと納税」の返礼品として、エーアンドエス産タマネギ(3千円で7・5キロ)を取り上げ、通販サイトの「楽天市場」では同市産の人気1位(5日現在)となっている。他のスーパー各社からも買い取りの引き合いが出てきた。
 エーアンドエスの大平貴之社長(44)は「周りの方のつながりで、本当に助けられている。うちのタマネギはでんぷん質が実に行きわたり、甘味が強いのが特徴。ぜひ手に取っていただきたい」と話している。
 JA全農おかやま(岡山市)によると、今年は暖冬の影響でタマネギはもともと豊作で、コロナ禍が重なって値段は大きく低下。
県内の卸売市場では、通常10キロあたり高値1300円程度で取引されているところ、5月上旬〜中旬は高値600〜700円、安値300円をつけることもあった。
市場では泣きながら「もう、引き取ってくれ」と業者に頼む農家もいた。同じく名産地の佐賀県では、急激な価格下落を受け出荷を見合わせる動きがあったという。
 5月下旬に政府の緊急事態宣言が全国的に解除されて以降は、タマネギの価格は持ち直してきている。

https://www.sankei.com/west/news/200606/wst2006060003-n1.html