2020年6月12日 13時26分

 他人の車に全地球測位システム(GPS)を取り付けて位置情報を得ることが、ストーカー規制法の禁じる「見張り」に当たるのか。この点が争われた刑事事件の上告審で、最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)は判決日を7月30日に指定した。高裁判断を見直す際に必要な弁論を開かないため、「見張りに当たらない」とした福岡高裁判決が維持される公算が大きい。

 この事件では、長崎県の男(53)が2016年4月〜17年2月、元交際相手の女性の車にGPS端末を取り付けて携帯電話とパソコンで600回ほど位置情報を検索していたとして、同法違反に問われた。女性が車検に出した際に、業者が端末を見つけて発覚した。

 00年にできた同法は、恋愛感情が満たされないことへの報復を目的とした「家や職場、学校など相手が普段いる場所の近くでの見張り」やつきまとい、待ち伏せなどを禁じている。争点になったのが「見張り」の解釈だ。

 18年1月の一審・佐賀地裁判決は、女性が日常的に使う車にGPSを付けていれば立ち回り先をいつでも調べられるから「位置情報の検索も見張りの一つと解釈すべきだ」と判断。男に懲役6カ月を言い渡した。

 だが、同年9月の福岡高裁判決はこれを破棄。同法の見張りは「相手の近くで」と限定しており、直接観察する行為を指すと指摘。ただ、電池交換などのため新たに端末を着脱する行為は見張りと解釈する余地があるとして、審理を地裁に差し戻した。

 福岡高裁では、別のストーカー事件でも「見張り」と認めない判決が出ており、検察が2件あわせて上告していた。検察は「GPSの精度は高く、日常生活の行動をほぼ全面的に把握できる」と指摘。同種事件が増えるなか、こうした強いプライバシー侵害を解釈で罰することは、法の趣旨から逸脱していないと主張している。

ソース https://www.asahi.com/articles/ASN6D4DCBN6CUTIL045.html