総務省が2日発表した8月の労働力調査によると、製造業の就業者数が前年同月比52万人減となり、リーマン・ショックの影響があった2010年1月以来、10年7カ月ぶりの下げ幅を記録した。コロナ禍では飲食や宿泊などサービス業の減少が目立っていたが、今後はリーマン時のように製造業でも本格的に雇用が悪化する恐れが出ている。
 全産業の完全失業者数(季節調整値)は前月比9万人増の205万人、完全失業率(同)は同0・1ポイント上昇の3・0%で、雇用の悪化は緩やかに進んでいる。
 だが専門家の間では、製造業の落ち込みが今後も続き、失業率の上昇が加速するとの予測が広がる。飲食業の場合は家計を補助的に支えるパートが多く、離職してもすぐに次の仕事を求めないケースが目立つため、統計上は失業者に数えられないことが多い。しかし、製造業は家計を中心となって支える人が多く、離職が統計の数値に直結するためだ。
 製造業では、就業者数の減少幅(前年同月比)が7月までは縮小傾向にあったが、8月に入って急速に悪化。自営業者などを除いた雇用者の内訳をみると、非正規雇用は32万人減った。6、7月はプラスを維持していた正規雇用についても18万人減に転じた。
 労働組合「派遣ユニオン」の関根秀一郎氏は「製造業の拠点が多い地域で派遣切りが増えてきている」と現状を説明する。リーマンの際は、製造業の就業者が大きく減ったことが社会問題化し、失業率は5・5%まで悪化した。
 日本総研の山田久氏は「製造業の雇用でコロナの影響が本格化するのはこれから」との見方を示し、「正社員の雇用調整も始まって失業率が悪化していく可能性は高い」と予測した。
 一方、厚生労働省が2日発表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は1・04倍で、前月から0・04ポイント低下した。8カ月連続で悪化している。(渥美龍太)

東京新聞 2020年10月3日 05時55分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/59302