国の持続化給付金を申請者に振り込む業務で、2020年度第1次補正予算分の業務を受託したみずほ銀行が、2次補正分を受託した三井住友銀行に比べ、2倍の手数料で契約していることが分かった。みずほ銀へは、給付金事業を国から委託された一般社団法人サービスデザイン推進協議会(サ協)が発注。サ協の役員はみずほ銀から派遣されており、「身内」の取引で税金の支出が膨らむのを経済産業省も容認している。 (皆川剛、桐山純平)

◆みずほ1件846円、2次補正で受注の三井住友は418円
 経産省が作成した資料などによると、サ協は給付金の振り込みを約202万件と想定し、みずほ銀と17億1000万円で契約。1件あたり846円となる。
 一方、2次補正で国から受託したデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーは100万件を想定、4億1800万円で三井住友銀と契約した。1件あたり418円で、みずほ銀の方がほぼ2倍高い。
 公表されている両行の法人向け手数料の価格は同水準。みずほ銀はそのまま適用している。一方、三井住友銀は「個別の取引については回答を控える」とするが、大口取引を理由に公表価格から半額ほどにしたとみられる。
 みずほ銀の振込手数料が値引きされていないことについて、大手金融機関の関係者は「行政の仕事は公共性が高く、事務コストに利益を大きく乗せる例は聞かない」と疑問視する。
◆チェックするはずの企業がチェック先に監事派遣
 サ協の監事は、みずほ銀が派遣している。監事は企業の監査役のように、一般社団法人の業務をチェックする役職。今回の取引は、業務のチェック役の派遣元に業務を委託した形になっている。
 サ協は、みずほ銀と値引き交渉をしたかどうかについて「個別取引の詳細についてはコメントを控える」と本紙に回答。みずほ銀は「短期間に大量の振り込みがあり、ほかの振り込みとの調整や体制整備に相応の負担が発生している」と説明した。
 経産省の委託マニュアルでは、「可能な範囲において」同業種で価格を競わせる相見積もりをとるよう民間事業者に求めている。サ協は相見積もりを取っていなかった。経産省は給付金業務の適正さを調べる中間検査を終え、「みずほの手数料は『不当な請求とはいえない』と結論が出ている」として、本紙の取材に問題視しない考えを示した。
◆識者「違法ではないが避けるべき」
 サ協とみずほ銀との取引について、元会計検査院局長の有川博・日本大客員教授は「監事を派遣する会社が業務を受けるのは違法ではないが、発注者と受注者が実質的に同じになるので避けるべきだ」と指摘している。

東京新聞 2020年10月24日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/63820