トルコのエルドアン大統領=14日、アンカラ(AFP時事)
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 周辺各国との摩擦を深刻化させている最近のトルコの強硬な外交政策について、エルドアン大統領が「かつてのオスマン帝国の再興をもくろんでいるのではないか」と憂慮する分析が国際社会で目立ち始めた。本当のところはどうなのか。

 ―オスマン帝国とは。

 1299〜1922年に存在したトルコ系の帝国。1453年にコンスタンチノープル(イスタンブール)を制圧し、ギリシャ系のビザンツ帝国を崩壊させた。一時は東欧やバルカン半島、東地中海沿岸一帯などを支配したが、その後西欧列強の進出で次第に領域を縮小させ、最後は革命により滅亡。現在のトルコ共和国が1923年に発足した。

 ―旧帝国地域の再征服をもくろんでいるのか。

 そうではなく、地域一帯でのプレゼンス(影響力や存在感)を拡大させようということだ。内戦が続くシリア、リビアへの部隊や軍事要員の派遣、東地中海のギリシャが管轄権を主張する海域での海底探査など、現状の国際秩序への挑戦と受け止められかねない行動に対する懸念が、欧米やアラブ諸国で高まっている。アルメニアが実効支配する係争地ナゴルノカラバフの奪還を目指すアゼルバイジャンへの支援もこれに当たる。

 エルドアン大統領は実際、オスマン帝国時代の権勢を意識した発言を繰り返している。最近の演説では、一連の対外政策は「抑圧」との戦いだと主張。「抑圧があればトルコはそこに行く。祖先が歴史を通じ、われわれに残した責任だ」と強調した。

 ―エルドアン政権は2003年から続く。なぜ今なのか。

 トルコのプレゼンス拡大志向は「新オスマン主義」と呼ばれるが、これ自体は10年以上前から顕著だった。ただ、当初は周辺諸国との外交による関係改善に重点が置かれ、国際社会で歓迎する雰囲気もあった。

 ところが10年代に入ると、エルドアン政権下での経済成長が停滞し、汚職疑惑もあって国民の支持離れが起きる。すると、エルドアン氏は国民全体というより右派勢力からの支持を固めようとし、民族主義を鼓舞する政策を取る傾向を強めた。

 新型コロナウイルス流行の影響もあり、外国からの投資や観光客に依存するトルコ経済は大きな打撃を受けた。通貨リラは年初から対ドルで約25%下落し、インフレが市民生活を脅かしている。トルコの識者からは一連の強硬な対外政策について「国民の不満をかわすためではないか」という意見が聞かれる。

 ―今後の展望は。

 トルコ経済の先行き見通しは決して明るくない。23年に予定される次の大統領選を見据え、今後も国民の支持をつなぎ留めるため、強い姿勢を打ち出し続ける公算が大きそうだ。(エルサレム時事)

10/25(日) 7:30配信
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