イギリスの最大野党・労働党は29日、ジェレミー・コービン前党首の党員資格を停止した。イギリスの平等人権委員会(EHRC)はこの日、コービン氏の党首時代に労働党内で行われた反ユダヤ主義的な言動を批判する報告書を発表したが、コービン氏がその内容に反発したため。

EHRCは、コービン氏が党首だった2015〜2020年初めの4年半の間に、労働党が「違法な」ハラスメント(嫌がらせ)や差別を行っていたと指摘。しかしコービン氏は、党内の反ユダヤ主義は反対勢力によって「劇的に誇張された」ものだと反論した。

労働党の広報担当は、「発言を撤回しなかった」ためにコービン氏の党員資格を停止したと説明している。

一方、コービン氏はこれについて、「政治的な理由によるもの」だとして、「断固として戦う」と話している。

コービン氏の発言について党内調査が終わるまで、処分は継続する予定。

■3件の平等法違反

EHRCは昨年、個人や団体から複数の苦情が寄せられたため、労働党に対する調査を開始していた。

EHRC報告書では、コービン党首時代の3件の平等法違反について労働党に責任があると示している。

・反ユダヤ主義の批判に政治的に介入した
・反ユダヤ主義の批判を取り扱う職員に、適切な訓練を行わなかった
・反ユダヤ主義的な常套句(じょうとうく)を用いたり、反ユダヤ主義に対する批判は偽情報や中傷だとほのめかした

また、コービン氏の事務所がこうした行為に「不適切な形で関与」したと示す23件の証拠が見つかったという。

現党首のサー・キア・スターマーは、EHRC報告書は労働党に「恥辱」をもたらしたと話した。その上で、報告書が示した問題の解決策を「新年にできるだけ早く」導入すると約束している。

労働党では2016年以降、党内の反ユダヤ主義的な行動について批判が続いており、多くの議員が抗議のために離党している。

■報告から3時間で追放

報告書が発表された午前10時過ぎ、コービン氏は「私は常にあらゆる形の人種差別を撲滅しようとしていた」と述べた。

党首時代には、差別撲滅の動きを「妨害するのではなく、加速させようとしていた」と主張。党内の反ユダヤ主義は「党内外の反対勢力により、政治的理由で劇的に誇張されていた」と反論した。

一方スターマー党首は報告書を受け、党内の反ユダヤ主義が「誇張されていた」と主張する人たちが「この問題の一部だ」と懸念を表明。ただし、この時点では報告書が特定の人物を名指ししているわけではないとして、コービン氏の処遇についての質問に答えていなかった。

コービン氏はその後のインタビューで、前言は撤回しないと発言した。このインタビューが発表された午後1時過ぎ、労働党のデイヴィッド・エヴァンズ書記長がコービン氏の党員資格停止を明らかにした。

労働党はその理由として、「コービン氏の発言」と、「発言を撤回しなかったこと」を挙げている。

スターマー党首は、「我々は(差別に対して)『いっさい容認しない』方針を掲げている。それなのに、事実に目を背けることはできない」と説明。「コービン氏の発言には非常に失望した。党は適切に対応したし、自分も全面的に支持する」と話した。

コービン氏は自分への処分について、「政治的介入には断固として戦う」とツイート。一方で、党内に反ユダヤ主義があったことを否定する人は「間違って」おり、「あらゆる人種差別について、一切容認しない姿勢を今後も支持する」と述べた。

■党内や与党・保守党の反応は? 

ユダヤ系の労働党議員デイム・マーガレット・ホッジは、「EHRC報告に対するコービン氏の恥ずべき反応を受け、処分は正しい判断だ」と話した。

また、「(党は)やっと『もうたくさんだ』と意思表示した。反ユダヤ主義は絶対に許容されてはならない」と述べた。

アンジェラ・レイナー副党首はBBCのラジオ番組に出演し、「コービン氏はとことんまともな人物だが、特定の問題についてまったく見えていないし、否定してしまいがちだ」と話した。

一方、党内左派はコービン氏の処分に反対している。

「社会主義運動グループ」は、処分に「断固」として反対し、「コービン氏の復活に向けてたゆまず努力する」と述べた。

また、コービン氏を支持する党内グループ「モメンタム」も、「(コービン氏処分は)新指導層が左派に大攻勢をかけた。党の結束のため、ただちに解除すべきだ」と表明した。(続きはソース)

10/30(金) 12:14配信
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