JR西 脱線事故遺族らに車両保存の計画説明
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11/7(土) 22:30 産経新聞

 乗客106人が死亡した平成17年のJR福知山線脱線事故で、JR西日本は7日、遺族や負傷者らを対象にした説明会を兵庫県伊丹市で開き、事故車両を保存する施設の整備計画の素案を伝えた。7両全てを現状のまま保存して社員の安全教育に活用する方針。令和6年秋の完成を見込んでいる。遺族からは「事故の重大さを学んでくれれば」などの声が聞かれた。

 JR西や関係者によると、素案では大阪府吹田市の社員研修センターに新たな建物(高さ約7メートル、広さ約1500平方メートル)を整備。温度や湿度を管理して事故車両の劣化を防ぐ。

 社員が事故の重大性を再認識できるよう、地下に安全教育の設備をつくり映像などで事故当時の様子が分かるようにする。令和5年に車両の搬入作業を始め、6年中に社員教育を始める計画という。

 JR西は昨年11月、遺族らに事故車両全てを社員研修センターで保存する案を示していた。現在は大阪市や兵庫県高砂市の施設で保管している。遺族や負傷者らの意見を聞きながら今後、一般公開するかや、兵庫県尼崎市の事故現場にある追悼施設「祈りの杜(もり)」などに移すかを慎重に検討する。

 長男の吉崇さん=当時(31)=を亡くした菅尾美鈴さん(71)は「悲惨な車両をあまり見たくはない」との思いを抱えつつも、「15年間つらい思いで歩いてきた遺族としては、車両が研修施設に保存されることで、若い社員たちが事故の重大さを学んでくれるのであれば、それでいい」と語った。

 長女の中村道子さん=当時(40)=を亡くした藤崎光子さん(80)は「社員研修センターに置くということは、社会からなくしてしまうことだと思う。(一般公開を)望まない遺族がいることは承知しているが、事故の真実を物語るのが現物。次の世代にまで鉄道の危険を強く訴える形で展示してほしい」と複雑な心境を明かした。

 JR西は、事故の教訓とそれに対する取り組みを今年度中に改めてまとめ、社員教育に用いる。長谷川一(かず)明(あき)社長は説明会後の記者会見で、「どのような反省を踏まえた上での取り組みなのか、意味を理解していくことが実効性の担保となる。安全を考える軸としていきたい」と話した。

 説明会は7日と8日の2日間に分けて非公開で実施。新型コロナウイルス対策で、伊丹市のほか3カ所に中継会場を設けた。