ジョー・バイデン次期米大統領は16日、ドナルド・トランプ大統領が政権移行を拒否し続ければ、新型コロナウイルス対策がさらに遅れ、犠牲者が増えるかもしれないと述べた。

地元デラウェア州ウィルミントンで記者会見したバイデン氏は、国内の感染拡大が急激に悪化している状況では、権力移譲のための連携が必要だと指摘。トランプ氏が今なお敗北を認めていない状況を、「くたびれるというより、恥ずかしい」と批判した。

政権移行作業を担当し、次期政権の移行チームに連邦政府の施設や予算などを提供する政府一般調達局(GSA)は、いまだにバイデン氏の勝利を認めていない。このためバイデン氏は、通常なら次期大統領に提供される機密情報の説明を受けられずにいる。バイデン氏の側近によると、新型コロナウイルスのワクチン配布についても、バイデン陣営は計画策定から排除されている。

この状況についてバイデン氏は、「まったく無責任だ」と記者団を前に批判。「理解しているんだろうか。これは何かを大げさに吹聴しているわけではなく、いかに人命を助けるかという話なのに」と述べた。

「連携しなければ、ますます人が死ぬかもしれない」とバイデン氏は述べ、全国にワクチンを配布する作業は「とてつもない大事業」だと指摘。それだけに、自分が就任する来年1月20日までワクチン配布計画の策定に着手できなければ、全国的なワクチン支給が「1カ月以上、1カ月半は遅れてしまう」と懸念を示した。

米大統領選では、各州に割り当てられた選挙人計538人のうち、過半数270人以上の票を獲得した候補が当選する。バイデン氏は今月7日の時点で279人を、さらに13日未明の時点で計306人を獲得する見通しとなり、当選確実となった。

しかし、トランプ氏は圧勝したのは自分だと主張し続けており、16日にも「自分が勝った!」とツイートしている。

複数の訴えを取り下げ
トランプ陣営は3日の選挙から間もなく、複数の州でさまざまな不正があったと主張し、法廷で争う姿勢を示した。

ただし、野党・民主党だけでなく与党・共和党の中からも、次第に敗北を認めるよう求める声が高まっている。

共和党側は16日には、バイデン氏が勝利したとされるミシガン、ジョージア、ペンシルヴェニア、ウィスコンシンの各州で、開票結果を争い提起していた訴えを取り下げた。理由は明らかにされていない。いずれの訴えも原告はトランプ陣営や共和党ではなく、有権者だった。トランプ氏はソーシャルメディアなどを通じて、選挙結果を争うよう自分の支持者に呼びかけ続けている。

トランプ陣営は大統領が負けたとされる複数の州で、開票結果に異議を唱えて訴えを提起したが、ほとんどについて法的根拠は乏しいと多くの法曹関係者はみている。

トランプ陣営では訴訟戦略の責任者が新型コロナウイルス陽性となったほか、各地で担当弁護士の交代や退任が相次いでいる。現在はトランプ氏の私設顧問弁護士、ルディ・ジュリアーニ氏が訴訟指揮をとっているという。

政権幹部の間に温度差
トランプ政権内でも、高官の発言に温度差が出始めている。ロバート・オブライエン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は16日、開票結果に関する訴訟が終わり、「バイデン、ハリス両候補が勝ったと確定すれば、そして現状はその様子だが、国家安全保障会議(NSC)はきわめてプロフェッショナルな政権移譲を実現する。絶対に」と述べた。

超党派の国家安全保障問題フォーラムで発言したオブライエン氏はさらに、バイデン陣営には政権運営の経験がある「非常にプロフェッショナルな人たち」が大勢いると評価し、「アメリカ合衆国で何が素晴らしいかと言えば、これまでも特に対立が激しかった時期でも、バトンを受け渡し、平和的な権限委譲を実現してきたことだ」と述べた。

https://www.bbc.com/japanese/54969497
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