◆医師らもマスク外した会食で感染

「仕事を終えた後の会食だった。どうしても緩んだ部分はあったかもしれない」。
20代の男性医師と、一緒に飲食した20〜30代の研修医ら男女6人の全員が10月、新型コロナウイルスに感染した川崎市立川崎病院。
市病院局の関広文庶務課長は残念がった。

課長によると、会食は2時間ほど。勤務中はマスクをしている医師らも「会食の席では外していたとみられる。

人数も6人となれば、遠い席の人に話す声は大きくなる。飛沫は飛びやすい」と推察。
この会食でクラスター(感染者集団)が起きたと認め、病院はあらためて長時間や大人数の会食を控えるよう周知した。


◆クラスターが多様化、しかし対策はシンプル

厚生労働省に助言をする専門家組織「アドバイザリーボード」は10月、「会食や職場などでの感染予防の徹底を」と注意喚起した。
「クラスターの態様が多様化しつつある」という。

政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は、クラスターが発生した12の自治体から事例を聞き取り、クラスターが発生しやすい5つの場面を整理した。
大人数や長時間の飲食、狭い空間での共同生活、居場所の切り替わりなど―5つの場面の対策はいずれもシンプルだ。

「マスクの着用」。厚労省結核感染症課の梅田浩史・感染症情報管理室長は「マスクをしていれば感染するリスクを下げられるという点で共通している」と言う。

マスクをしている人同士なら、仮に接触確認アプリ「COCOA(ココア)」で通知がくる感染者と1メートル以内の距離に15分以上居合わせても、
換気などをしていれば濃厚接触者に当たらない。


◆飛沫の7、8割を抑えるマスク、1割未満のフェースシールド


あらためてマスク着用の効果を知らしめたのが、理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」だ。
8月下旬、2千人程度の観客が入る多目的ホールで飛沫がどう飛び散るか、マスクがあればどう防げるのかを解析した。

不織布やポリエステルのマスクは飛び散る飛沫の8割、綿の布マスクでは7割を抑えると判明。
いずれのマスクもエアロゾル(空中に浮遊する微粒子)は半減した。一方で、フェースシールドが抑える飛沫は1割未満だった。
大きな飛沫は5〜9割抑えられるが、エアロゾルはほぼ漏れるという結果だった。

理研チームリーダーの坪倉誠・神戸大教授は「マスク着用で吸い込む飛沫の量を7割は抑えられる。
感染した人としていない人の両方がマスクを着けるとかなりの効果がある」と言う。

政府は「感染防止と社会経済活動の両立」を基本姿勢に掲げる。会食などを全面的に制限することは難しい。
アドバイザリーボード座長で国立感染症研究所の脇田隆字所長は「食事は黙って食べて。おしゃべりする時はマスクを着けて」と呼び掛ける。

「新しい会食スタイル」が感染拡大抑制の鍵を握る。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/68955