┃カルト性を高める熱烈支持者

 その一方で、残った支持者はますます「カルト性」を強めていくのではないかと心配だ。

 トランプ氏とその熱烈支持者は、分断を招く二元論的思考、陰謀論との高い親和性、現実を無視した独自の世界観、
独裁志向といった従来からの傾向に加え、大統領選の敗北以降、過剰な被害者意識、
極度の他責思考、目的のために手段を選ばないやり方など、その「カルト性」を高めてきた。

┃カルト的思考と陰謀論

 カルトメンバーは、そのリーダーを絶対視し、それと共にある自分たちは絶対的な正義であり真実の側にいると信じる。
都合が悪い事態が起きても、事実を直視し、「自分たちに原因があって問題が起きたのでは」と自省することはない。
「それは事実ではない」と否認するか、「不正があった」「裏には○○がいる」との陰謀論に走る。

 陰謀論はカルトにはつきものだ。彼らにとっては、悪いことは常に「自分たち以外の誰かのせい」。
敵対する人達や正体がはっきりしない組織などが裏で動いたとのストーリーを作り上げ、
それは「仕組まれたもの」であるとして、自分たちは悪の組織の「被害者」であると訴える。

(中略)
┃日本に伝播するカルト性

 トランプ氏と熱烈信者のカルト的発想は、選挙結果が明らかになってまもなく、日本に伝播。
トランプ氏を支持するデモが行われた。その状況を撮影したある映像を見ると、日本語で書かれたこんなプラカードとシュプレヒコールがあった。
「これはもう大統領選挙ではない 善と悪との戦いだ!」

(中略)
 こうしたカルト的陰謀論を発信するのは、匿名アカウントだけではない。
作家でジャーナリストとして知られる門田髀ォ氏も、こんなツイートを発っしている。

>「連邦議事堂での混乱を受け『民主主義が前例のない攻撃を受けている』とバイデン氏
>不正選挙という“前例のない民主主義への攻撃”が最悪の結果を生んだ事の自覚はないようだ」

┃選挙惨敗を「不正」にしたオウム

 そういう人たちに、思い出して欲しい出来事がある。

 1990年2月の衆議院総選挙に出馬したオウム真理教教祖麻原彰晃こと松本智津夫の言動だ。
信者の住民票を選挙区に移動させ、像の帽子をかぶった若い女性信者を踊らせるなどの目立つ選挙運動を展開し、テレビにも取り上げられた。
そのうえ有力候補者の選挙ポスターを剥がすなどの違法行為も展開。
麻原は勝つ気まんまんだった。

ところが、結果は惨敗。すると彼は、開票作業の「不正」を主張した。
「票のすり替えがあった」と述べ、「国家権力」さらには「フリーメーソン」の陰謀と言い出した。信者たちは、これを受け入れた。

 具体的な事実、説得力のある根拠を示さないまま、「不正」を言い募り、陰謀論を展開する行為は、あの時のオウムの荒唐無稽な言動とどう違うのだろうか。

┃陰謀論を放置したらどうなる?

 根拠のない陰謀論を放置していれば、人々はそれに慣らされていく。ウイルス感染が広がるように、人々の心を汚染してもいくだろう。

 オウムが示していたカルト性を、私たちの社会は軽視した。メディアは、奇妙な集団として受け止めて面白おかしく取り上げたり、
新手のサブカルチャーや新しい宗教の代表のように扱ったりした。そうして、多くの被害を出す集団になるまで”育つ”のを許してしまったのだ。

┃陰謀論は一つひとつ否定していく

 根拠なき陰謀論については、面倒でも「これは間違い」「これは根拠が示されていない」と一つひとつ、こまめに、忍耐強く否定していく情報発信を続けていくことが大切だと思う。
そうすることによって、カルト的思考・発散の拡散に抗いたい。

全文
https://news.yahoo.co.jp/byline/egawashoko/20210108-00216678/