緊急事態宣言により、神奈川県内の飲食店は午後八時までの時短営業を求められることになった。既に売り上げが激減して苦しむ中、どの店も「商売にならない」「早く感染が収まってほしい」という思いの間で難しい決断を迫られている。 (米田怜央、志村彰太、西岡聖雄)
感染者が増え続け、横浜、川崎市は八日から午後八時閉店を求められる。横浜市中区吉田町でイタリアンダイニング店を営む土屋良一さん(40)は「早く元の日常に戻ってほしい」と要請に応じることを決めた。
 しかし「お酒の提供が午後七時まででは商売にならない」と話す。常連客からは「また一カ月後だね」と言われたという。持ち帰りや宅配に力を入れているが、時短をカバーする売り上げはない。
 店がある地域は「バーと画廊の街」として知られ、新型コロナが流行する前は路上でビアガーデンを開くなど交流も盛んだった。苦境が続けば「どんどん店が閉店して、街の魅力がなくなる」と懸念する。
 同区のスナック「ミント」を経営する石井ひろみさん(54)は「店を開ければ開けるほど赤字」と、八日から二月七日まで休業することを決めた。
 これまで来店人数を通常の半分以下の二十五人に制限しているが、席は埋まらない。繁忙期の年末の売り上げも昨年は前年と比べて七割以上減った。融資を受けたり、私物のアクセサリーを売ったりして運営資金を補ってきた。しかし、常連客の来店時間は午後九時以降が中心。八時閉店では集客を望めない。「感染が収まってから安全に店を再開したい」と絞りだした。
 両市に比べれば感染者が少ない地域も含め、十二日から県内全域の全飲食店(三万三千店舗)が時短要請の対象となる。
 小田原駅前の居酒屋「彩酒亭 洞(ほら)」は要請に応じる考え。経営する二見洋一さん(48)は感染規模が異なる大都市と一律に時短要請されることには「開店が遅い店にとっては大変な打撃だが、個人的には一律の方が誤解がなくなる」と話す。
 協力金をもらっているのに深夜営業していると誤解する市民がいたため。「午後八時をすぎると人出がなくなり、先月の売り上げは前年比75%減。もちろん協力金はない。緊急事態宣言で、やっと同等になる」と苦しい胸の内を明かした。
 ただ、不満もある。「協力金の支給条件などを県に問い合わせても電話がつながらない。飲食店に協力を求めるなら、せめて事業者用の相談電話を設けてほしい」。医療逼迫(ひっぱく)を受け、協力しない飲食店名を公表する動きには「病床や医療スタッフの不足は行政の課題。飲食店と並べて論じてほしくない」と話す。
◆「徹底した外出自粛を」 県が追加対策 県立高は授業時間短縮
 県は、飲食店などに要請している午後八時までの時短営業の期間を、緊急事態宣言に合わせて二月七日までに延長すると発表した。これまでは一月末までとしていた。協力金は一日一店舗当たり六万円。時短営業しない店には行政指導したうえで、店名公表も検討する。
 県民には生活に必要な場合を除き「徹底した外出自粛」を求める。特に午後八時以降は「不要不急の外出自粛」を強く求める。遊興施設や商業施設、運動施設、映画館なども午後八時に閉店するよう「お願い」する。ただし、これらの店に協力金は支給せず、応じなくても店名公表はしない。県民利用施設は原則として休館とする。詳細は県のホームページで公開するという。
 テレワークの推進では、これまで「実施率五割」を目指していたが、国の方針に合わせて、テレワークなども含め「出勤者数の七割減」と表現を変えた。
 県立高校は通常の授業時間を十分短縮して一コマ四十分とする。感染状況が悪化すれば登校日を減らすことも検討。部活動は大声を発するなど感染リスクのあるものは中止。修学旅行も延期か中止とする。
 黒岩祐治知事は「緊急事態宣言は感染拡大を止めるための重要なカード。難局を乗り越えないといけない」と話した。 (志村彰太)

2021年01月08日 07時29分
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